「あなたを殺しにきました」殺し屋に狙われた会社役員の告白 説得して命拾いの顛末

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“死んだふりをして…”

「護身用にビニール傘を持ち男と向き合うと、彼はA4の紙を差し出し“これはあなたですか?”と尋ねてきた。紙には私の写真や名前をはじめ、住所、車のナンバーまで記載されており、続けて“あなたを殺してくれと頼まれた”“東京や大阪の人間、外国人ルートにも話が回っている”と少し興奮気味に喋るのですが、凶器を持っている様子はなく、虚勢を張っているのかなとも思いました」

 被害者男性が冷静なのにはわけがあった。豊川氏の運営していた学校法人を巡るトラブルに巻き込まれて以降、身の危険を感じる嫌がらせが相次ぎ、用心を重ねていたという。

「さらに男は“死んだふりをしてくれないか”と頼んできた。幾らか前金をもらい、私が死んだ証拠の写真と引き換えに、残りの報酬を渡すと言われていたようです」

 あまりのバカバカしさに、被害者男性は絶句しつつも、“殺し屋くん”が不憫に思えてきたとしてこう続ける。

「彼はお金に困っている様子だったので、“私が生きているのがバレたら君も大変なことになる。借金があるなら解決した方がいいから、友人の弁護士を紹介しよう”と諭したところ、彼も“そうですね”と素直に応じた。それで、すぐに弁護士と警察に連絡をして、彼は連れて行かれました」

 結局、脅迫容疑で逮捕された殺し屋くんの供述で、待ち合せ場所に現れた豊川氏も逮捕されたわけだが、この二人が不起訴処分となったのは当然だと憤るのは、豊川氏の代理人弁護士だ。

「豊川さんは殺害を依頼したことは一切ない。学校法人の権利を取り戻そうと、連絡のとれない関係者の居場所を聞いてくるよう指示しただけ。しかも、殺害を指示されたと告白した男は、結局シャブで逮捕されたんです。シャブ中の話したことを真に受けた県警のフライングだと思いますよ」

 改めて被害者男性にも尋ねてみたところ、

「いかつい男を寄越しておいて“連絡先を聞くだけでした”なんて主張が、まかり通るのでしょうか……」

 何ともお粗末な話である。

週刊新潮 2021年11月25日号掲載

ワイド特集「『大殺界』を抜けて」より

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