「あなたを殺しにきました」殺し屋に狙われた会社役員の告白 説得して命拾いの顛末
「あなたを殺しに来ました」――突然、見ず知らずの他人にそう告げられたら、誰もが仰天、腰を抜かすだろう。しかし、殺し屋の標的となったこの男性は無傷で生還を遂げた。なんとも奇妙な「契約殺人」事件の顛末とは。
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〈訴訟相手の殺害依頼〉(東京新聞)なんて見出しが躍る紙面を見ればまるで映画のような話だが、以下はまごうことなき、日本で起きた現実の事件である。
10月13日、愛知県警中警察署(名古屋市)は、進学塾の元代表・豊川正弘氏(71)を殺人予備の疑いで逮捕した。容疑は彼が知人男性(37)に対して、会社役員の男性(71)の殺害を指示したというもの。実は11月2日付で豊川氏は嫌疑不十分で不起訴になっているが、まずこの事件を始まりから振り返ろう。
「事件が表沙汰になる前日の10月12日午後3時半頃、30代くらいのいかつい顔のスキンヘッドの男が自宅の玄関先に現れましてね」
と話すのは、当の事件で被害者となった会社役員の男性である。
「インターフォン越しに妻が応対し、不審だったので不在を装って“主人はいない”と伝えると、近所の公園で待ちますと言って姿を消しました。ただ、放っておくのも気味が悪いから、妻を公園に行かせ、彼を家の前の駐車場まで呼び出すことにしたのです」
現場は名古屋市内の閑静な住宅街で、近所では工事が行われて人目もあり、スキンヘッドの男も下手なことはできないだろうと考えたという。
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