報ステ「大越健介氏」はテレ朝にとってありがたい存在 相思相愛はいつまで続くか
テレビ朝日の看板番組「報道ステーション」(月~金曜午後9時54分)のメインキャスターにNHK出身の大越健介氏(60)が就任してから2カ月が過ぎた。大越氏は「報ステ」の水に慣れてきたように見えて、視聴率も回復しつつあるが、以前の水準には届いていない。あらためて考える。どうして大越氏は招かれたのか。テレ朝にプラスだったのか。
「キャスターは面白い。やりがいがある」
大越氏は周囲にそう話していた。2010年から2014年まで「ニュースウオッチ9(NW9)」に出演していたころのことである。
だからテレ朝の絶対的最高権力者である早河洋会長兼CEO(77)の誘いに喜んで応じ、「報ステ」のキャスターを引き受けたのだろう。
早河氏は「報ステ」の前身番組である「ニュースステーション(Nステ)」の初代プロデューサーなので話も合ったはず。おまけに2人はともに元政治部記者だ。
大越氏は「報ステ」からオファーがあった際、「まじかよ」と感激したという。9月17日の放送記者を相手にした会見で明かした。
一方の早河氏も同26日の放送記者を対象とした月例会見で「ニュースステーション以来、22時台のトップレベルを走り続けてきた歴史的戦略ゾーンを、さらなる高みに導いてくれることと確信しています」と、期待を口にした。
相思相愛。だが、大越氏の就任当初は視聴率がやや低調だったのは知られている通り。以下、大越氏がメインキャスターを務める月曜から木曜までの「報ステ」の週間平均視聴率である。
■10月第1週 世帯平均約12.6%、個人全体平均約7.6%
■同第2週 世帯平均約10.8%、個人全体平均約5.8%
■同第3週 世帯平均約10.5%、個人全体平均約5.7%
■同第4週 世帯平均約12.4%、個人全体平均約6.8%
■11月第1週 世帯平均約12.3%、個人全体平均約6.9%
■同第2週 世帯平均約11.9%、個人全体平均約6.6%
■同第3週 世帯平均約11.1%、個人全体平均約6.2%
大越氏が登場する直前、9月第5週は世帯平均が約12.3%、個人全体平均は約6.7%だったから、世帯平均が10%台と個人全体平均が5%台ではやや低いと言わざるを得ない。現在は回復基調にあるものの、就任以前の水準には達していない。
それでも大越氏の招聘には意義があった。「報ステ」は高視聴率だけを目標とする番組ではないからだ。「テレ朝全体のブランディングを左右する番組」(テレ朝報道局員)なのである。
一時期、「反日番組」などと批判され、スポンサーへの抗議を呼び掛ける動きまであったが、それでは高視聴率でもダメなのだ。
その点、大越氏は安心できる。知名度十分で好感度も高い上、NHK出身だけあって、テレビ局が政治に押さえつけられているという現実も理解している。なにしろ政治記者時代の担当が電波行政を握っていた竹下派だったのだから。
大越氏が「NW9」を降板した際、「歯に衣着せぬ物言いが政権から嫌われたため」などと一部で伝えられたものの、それを信じる人はNHK内にいない。本人も明確に否定してきた。
大越氏は「NW9」降板後も、画面に出つづけた上、非ライン職では最高位の記者主幹にまで昇進している。本当に政権から睨まれたらムリだ。
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