ひろゆき氏が「年末ジャンボを買う人は頭が悪い」とツイート 説得力がまるでない思考回路を分析
ファン層の存在
ただし、炎上商法と異なるのは、一定のファン層が存在することと、正論と受けとめられる発言もあることだ。
例えば不登校の問題だ。一部のメディアや論者は、不登校に理解を示す。だが、ひろゆき氏は、不登校のYouTuberとその父親に対して「学校へ行け」と批判。かなりの支持を集めたことがあった。
デイリー新潮は2021年4月に「議論百出の『ゆたぼん』中学問題、『不登校新聞』の編集長はどうみているのか」の記事を配信している。
一方、ひろゆき氏は「古文、漢文を学校で教える必要はない」と主張したこともあった。この時は、不登校の問題ほどは支持を集められなかった。
デイリー新潮も同年3月に「ひろゆき氏『古文・漢文オワコン』論に賛否 識者が語る“古典を学ぶべき高校生”は?」の記事を配信した。
「ひろゆき氏は『経済的合理性』や『実用主義』の観点から、『将来、全く使わない古文や漢文はいらない』と、世の常識に逆らいました。しかし、古文や漢文を学ぶことは、古典文化に触れる貴重な機会であることは言うまでもありません。実用主義を乱用し、文化や娯楽という観点を無視する。古文と漢文に異議を申し立てた姿勢は、宝くじを買う庶民を『頭が悪い』と批判した発言と共通点があると言えるでしょう」(同・井上氏)
黒い優越感
物事を批判する際、複雑な側面を切り捨て、とにかく一刀両断してしまう。だからこそ、ひろゆき氏の言説は“薄っぺらい”印象を受けることが少なくない。しかし、だからこそSNSでは拡散し、支持を集めるということも言える。
「かつて論壇は、月刊誌に掲載された論文がベースでした。文章量は多く、複雑で矛盾した側面を充分に説明した上で論が展開されていました。ところが今の“ネット論壇”はSNSと深い関係があります。そのため、短い文章で切って捨てるほうが説得力があるような錯覚が生じやすいのです。ひろゆきさんの発言は、SNSと相性が良いと言えるでしょう。そのため一部のネットユーザーは“岩盤支持層”のように、ひろゆき氏を支持するわけです」(同・井上氏)
ひろゆき氏の熱心なファンは、年末ジャンボを求める長蛇の列を見た瞬間、「あ、頭の悪い貧乏人がいっぱいいる」と考え、“黒い爽快感”を味わうようだ。
宝くじを買わないことで暗い優越感を覚えるのと、買うことでささやかな楽しみを得るのと、どちらが幸せか──? 答えは自明の理のように思える。
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