ひろゆき氏が「年末ジャンボを買う人は頭が悪い」とツイート 説得力がまるでない思考回路を分析

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ギャンブルを楽しむ人たち

 宝くじの場合、還元率は5割を超えてはならないと法律で定められている。2019年は46・5%で、残りの53・5%が“寺銭”ということになる。

「競馬、競輪、競艇といった公営ギャンブルで還元率は70%台とされていますから、残りが寺銭というわけです。海外のカジノになると還元率は94~98%と高く、寺銭は僅か数%です。ひろゆきさんは『半分も主催側が取るような宝くじに金を使うのは馬鹿馬鹿しいことだ』と指摘したかったのかもしれません」(同・井上氏)

 だが、寺銭の問題を考慮したとしても、ひろゆき氏の指摘には違和感がある。その理由を井上氏は、「基本的に宝くじで破滅した人はいない」という事実を忘れているからだと指摘する。

「競馬で身を持ち崩した人間はいます。しかし、宝くじはどうでしょうか。友人や知人から借金を重ね、宝くじに全財産をつぎ込む人などいないでしょう。年末ジャンボなら『冬の風物詩』として購入する人が大多数のはずです。競馬なら『年に1回、12月に開かれる有馬記念の馬券だけは買う』という層と重なります。ひろゆきさんは『ギャンブルを楽しむ人たち』の存在を忘れて批判したため、多くの人から批判されることになったのだと思います」

決めつけ言説の限界

 もし、ひろゆき氏がパチンコや競馬に依存し、身を持ち崩した人を「頭が悪い」と批判したのなら──その毒舌の是非はともかく──支持を集めた可能性があるという。

「ひろゆきさんの言説は『経済的合理性』や『プラグマティズム(実用主義)』に根差し、世の中の良識や正論に逆らうというのが基本的構図だと思います。発言は借り物の言葉ではなく、自分の言葉を使って舌鋒鋭く迫ります。そのため、一定のファンが存在するわけです。とはいえ、『経済的合理性』だけで全ての事象を批判できるはずもありません」(同・井上氏)

 いわば、ひろゆき氏の“弱点”が露呈したのが、今回の「宝くじ批判」だったようなのだ。

「功罪相半ばするという言葉があります。本来、世の中の動きは複雑で矛盾しているものでしょう。宝くじなら、『ハズレたら損をするけど、夢は買える』と相反するものが共存しています。ところが、ひろゆき氏は『宝くじに金を使うなんて頭が悪い』と、宝くじの一側面だけをピックアップし、一刀両断してしまいます。この決めつけは世論の反感を買うリスクがあります。実際、ひろゆき氏の人気は、炎上商法に重なるところがあるのは事実でしょう」(同・井上氏)

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