「相棒」、タイトルバックの歴史 亀山薫(寺脇康文)が9話で卒業したシーズン7は異質

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 水谷豊主演の人気刑事ドラマ「相棒」(テレビ朝日系・毎週水曜21:00~)は、謎解きの面白さもさることながら、シーズンごとに異なるオープニングのタイトルバックも魅力である。今作でシーズン20を迎えた「相棒」は、7シーズンにわたって相棒を務める反町隆史が卒業することでも注目されている。そのタイトルバックの歴史について繙いてみたい。

 今やお馴染みとなった「ちゃ~ちゃららっ♪ ちゃっちゃ~ちゃら~♪」というメインテーマを作曲したのは、主にドラマやアニメなどの劇伴音楽を手掛けている作曲家・アレンジャーの池頼広(いけ・よしひろ)氏である。新シーズンが始まるたび、斬新なアレンジがなされている。

 だが、この曲がタイトルバックに使われるようになったのは、実はシーズン3からだ。

 シーズン1のオープニングテーマ曲はドラムの音がメイン。そこにベースなどの音が少しだけ入る、かなりシンプルな仕上がりだった。シーズン2では、この曲に音数を増やし、スピード感も出すなどしてパワーアップさせた。この2曲はともに往年の刑事ドラマのような緊迫感と迫力に満ちたサウンドで、現在のテーマ曲とは似ても似つかない。さらにシーズン1のオープニングではラストに「相棒!」という男性の声が聞こえる。正式な番組タイトルが土曜ワイド劇場時代を引き継いだ「相棒・警視庁ふたりだけの特命係」だった点も特長だ。

 シーズン3以降、オープニングテーマ曲として現在のものが定着していくわけだが、シーズン6までの計4シーズンは、一度もアレンジが変えられなかった。シーズン5と6で、ともに最後の曲の終わり方に少しの違いがある程度の差だ。これによって、“「相棒」といえば、この曲!”ということを広く認知させることに成功したといえるだろう。

 シーズン7では、一つのターニングポイントを迎えることになる。まず長さが約12秒と歴代最短になった。映像もガラスが割れて飛び散っているだけで、なんとタイトルバックに杉下右京もその相棒も登場しない。さらに「Love is the game~♪」という歌い出しから始まる、外国人女性ボーカルの英語歌詞付きバージョンとなっているのだ。当時、ファンの間では「歌詞が聞き取れない」「日本語訳を教えて」などと話題になった。

 このシーズン7は第9話をもって寺脇康文演じる初代相棒・亀山薫が番組を卒業することが放送開始前に発表されていた。おそらく途中で相棒役の映像を差し替えることを避けるため、このようなバージョンになったと推察される。そしてこれ以降、オープニングのアレンジがガラッと変わっていくこととなる。

2代目相棒時代

 2代目相棒となった神戸尊(及川光博)が本格的に活躍するシーズン8では、大人の雰囲気漂うジャズ風のアレンジがなされた。映像はラストの部分で飛び散ったガラスが天に向かって舞い上がっていく構図だ。前シーズンの「割れたガラスが飛び散る映像」に連なる演出である。このつながりが単なる偶然なのか、それともスタッフが意図したものなのかは不明だが、亀山薫から神戸尊へと相棒のバトンが受け継がれた、と読み取れなくもない。

 シーズン9ではトランペットが、シーズン10ではアルトサックスの音色が軽快に鳴り響く印象的なアレンジがなされた。8からジャジーな雰囲気はあったが、シーズンが進むにつれて段々とその要素が濃くなっていく。特に10はかなり大人な感じだ。曲のスピードも速くなり、よりリズミカルでテンポが良くなっている。この3シーズンはクールでかつキザ、そしてエリートという神戸尊のキャラクターに合わせたかのようなアレンジだったといえよう。

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