【カムカムエヴリバディ】朝ドラ史上、類を見ない早い展開でも視聴者が満足する仕掛けとは?

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印象的だった第3話のナレーション

 スピーディーな展開なのに骨太のメッセージをセリフやナレーションにさらりと織り込んであるのもこの朝ドラの特徴だ。軽佻浮薄なドラマとは違う。

 1939年だった第3話。城田優(35)のナレーションにこんな下りがあった。

「安子にはこれといって夢と呼べるものはありません。安子はただ大好きな町で大好きな人たちと暮らす日がいつまでも続けばいいと思っていました」(城田のナレーション)

 当時の安子はそんなささやかな願いしかない14歳だった。

 だが、たった6年後に大好きな町は無差別空襲で破壊され、大好きな母も祖母も命を奪われてしまった。

 やはり大好きな父は母と妻を失ったショックで心を病んでしまう。
 小さな願いすらかなわない時代だったことが浮き彫りにされた。藤本さんによる計算し尽くされた構成だ。

 次は安子に幸せが訪れる順番のはずだが。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮編集部

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