「幻魔大戦」りんたろう監督が語る 「角川アニメ」誕生の80年代と「鬼滅」の現在

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アニメの大衆化と「君の名は。」「鬼滅の刃」

――80年代にそうした大人アニメを広く見てもらう試みがあった一方で、90年代以降、大人アニメはニッチな方向に進んでいったように思えます。その辺りはどう見られますか。

りん:戦後のアニメーションの歴史を振り返ると、僕も『鉄腕アトム』(1963年放送開始第1作)をやりましたが、当時のキャラクターや表現は稚拙なんです。でも当時は稚拙でなくて、それが精いっぱいだった。そこにアニメーターになりたい、演出になりたいと優秀な若者たちが業界にやってきて切磋琢磨し、技術と表現がどんどん豊かになっていった。その頂点が80年代です。そこで一度終わったといえて、90年代以降は、技術的にはかなりのものを備えながら、そこからいろんな方向に分れていく。80年代までやってきたことが、そのままずーっとつながるなんてありえないですよ。あそこで一度終わったものが、そこからどんどん変容していって、いまの『鬼滅の刃』まで来ているというわけです。

――そこがお聞きしたかったことで、90年代以降ニッチ化したものが、『君の名は。』や『鬼滅の刃』でもう一度大衆化して、80年代に似てきたのかなと思ったのです。

りん:それは違うと思いますよ。いまの映画のほうがより商品になっています。ヒットの仕方が全然違います。いい悪いは別ですよ、製作側がヒット商品を作るべく「ガガーっ」とビジネスにしている。世の中のいろんなデータを分析しながら、マーケティングをして作っています。一方、80年代はみんな好きなことを好きにやっただけだから。80年代までは、アニメの好きな連中の熱気で、作品を作ってきているのですよ。

 ただ、長編はお金がかかる。うま味がそんなにないと思ったら企業は手を引いちゃうんです。いま、スタジオジブリとか新海誠くんの作品は興行収入が100億円、200億円いきますが、そこは今と昔とは違います。『鬼滅の刃』とかになると400億円、いい意味で怪物ですよ。これからモノを表現する人たちは(稼がなければいけないので)キツイですよね。

――40年経って、いま敢えて『幻魔大戦』の見どころは? どこになりますか?

りん:僕が観て欲しいというよりは、今の若い世代が40年前の『幻魔大戦』で何を感じるのか、むしろ知りたいですね。いま、若い世代はスタジオジブリや新海くん、『鬼滅の刃』の作品はみんな観ていると思います。でも『幻魔大戦』は全然違うテーストじゃないですか。いま話したような時代背景を知れば理解を得られる部分はあると思うけれど、そんなこと話す機会もないし。いまの若い人があれを見てどう思うのか、僕が逆に聞きたいですね。

数土直志(すど・ただし)
ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。アニメーションを中心に国内外のエンターテインメント産業に関する取材・報道・執筆を行う。大手証券会社を経て、2002年にアニメーションの最新情報を届けるウェブサイト「アニメ!アニメ!」を設立。また2009年にはアニメーションビジネス情報の「アニメ!アニメ!ビズ」を立ち上げ、編集長を務める。2012年、運営サイトを(株)イードに譲渡。2016年7月に「アニメ!アニメ!」を離れ、独立。

デイリー新潮編集部

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