習近平と抱き合う、へつらう、慰め合う… 自民党で出始めた岸田“中国外交”への不信感

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「抱き合う、へつらう、慰め合う」対中姿勢

 安倍政権時代に岩盤支持層といわれた保守層を中心とする「離反」は、とりわけ外交・安全保障面で目立っている。安倍政権で外相に就き、戦後歴代2位の在任期間(4年7カ月)を誇る岸田氏は、超党派の日中友好議員連盟会長を務めていた林芳正氏を外相に起用。中国の新疆ウイグル自治区や香港での人権問題をめぐり制裁を科せるようにする「日本版マグニツキー法」(人権侵害制裁法)の制定を当面見送る方針と報じられるなど、対中姿勢に「抱き合う、へつらう、慰め合う」の弱腰だと批判されている。

 岸田氏は、自民党総裁選に先立つ9月13日の記者会見で「権威主義的・独裁主義的体制が拡大している」と中国を牽制し、人権問題にも毅然と対応すると表明。台頭する中国をにらみ人権問題担当の首相補佐官や経済安全保障の担当閣僚を新設する考えを示し、保守派の支持を広げた。たしかに経済安保相に小林鷹之氏、首相補佐官に中谷元氏をそれぞれ起用したが、「親中派の代表格である林氏を外相にして、法制定も見送りとなれば、総裁選で勇ましい発言をしていたのは保守派の歓心を買うための方策にすぎなかったのではないかと疑いたくなる」(自民党関係者)との不信感を招いている。

 10月8日には米豪露に続く4カ国目の首脳に習近平国家主席を選び、電話協議を行った岸田首相。「日中国交正常化50周年である来年を契機に、建設的かつ安定的な日中関係をともに構築していかなければならない」と強調し、習主席からは「善隣友好は国の宝」との前向きな姿勢を受け取った。

「日本にとって中国は隣国であり、民間レベルでの経済的な結びつきは強い。対話を続けていく必要はありますが、言うべきことは、ハッキリ言っていきたい。尖閣諸島周辺の領海侵入やウイグルにおける人権問題など、看過できない問題には毅然とした対応をとっていきます」

 月刊誌「WiLL」12月号のインタビューで、こう強調している岸田氏。米国のバイデン政権が対中包囲網の構築を急ぐ中、岸田首相はどのように関与していくのか。自民党ベテラン議員の一人は不安を隠さない。「岸田首相は維新が総選挙で躍進した理由をまったくわかっていない。自民党から保守票が逃げて維新にいってしまったんだよ。このままでは来年夏の参院選も難しい戦いになりかねない」。

 中国と台湾のTPP加盟問題や、延期となっている習国家主席の国賓来日問題など、対中外交の「難問」は山積している。来年9月に迎える国交正常化50周年に向けて、岸田首相への保守層の疑念は続きそうである。

取材・文 小倉健一 ITOMOS研究所所長

デイリー新潮編集部

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