巨人、ルーキーが1年で“自由契約”に…「大量育成契約」は“目的外使用”の指摘

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残留が“暗黙の了解”

 そもそも巨人の「大量育成契約」は何が狙いなのか。ひとつは、故障で長期的にプレーできない選手を支配下登録から外すことで、新たな戦力を獲得する枠を確保することだ。以前にも、19年のドラフト1位である堀田賢慎は、1年目に右肘のトミー・ジョン手術を受け、その年のオフに育成選手として再契約している。

 もうひとつは、他球団からフリーエージェント(FA)で獲得した選手の人的補償として、若手の有望株が他球団に流出することを防ぐことが目的とされる。冒頭で触れた自由契約となった12人を見ても、横川凱をはじめ、井上温大や堀岡隼人、沼田翔平、伊藤海斗など20代前半の若手が多く含まれている。自由契約になれば、人的補償の対象から外れ、他球団に狙われる心配はない。

 もちろん“自由契約”となるため、他球団からオファーがあれば移籍も可能だが、「育成選手として再契約の見込み」と報道されている通り、そのまま巨人に残留することが“暗黙の了解”となっているようだ。戦力を補強したい他球団からすれば、何とも歯がゆい話ではあるが、現行のルールでは、これらの選手の獲得に動きにくいのが現状だ。

 しかし、「日本プロ野球育成選手に関する規約」第2条には、こう記載されている。

<本規約に定める日本プロフェッショナル野球育成選手(以下『育成選手』という)とは、前条の日本プロフェッショナル野球組織の支配下選手として連盟選手権試合出場可能な支配下選手登録の目的達成を目指して野球技能の錬成向上およびマナー養成等の野球活動を行うため、球団と野球育成選手契約(以下『育成選手契約』という)を締結した選手をいう>

早急な見直しを図るべき

 育成選手制度とは、支配下で登録するには、技術的に足らない選手の“育成”を目的としたものだ。これを考えると、巨人の育成選手を巡る一連の動きは、本来の目的から外れている。

 現行の育成選手や育成ドラフトの制度ができたのは05年であり、そろそろ見直しを検討すべき時期に入っている。シンプルに問題を解決するのは、二つのルールが必要になるだろう。長期間のリハビリを要する選手のために「長期故障者枠」を設けることだ。ただし、球団側の悪用を防ぐために、この枠に登録した選手は支配下登録に戻すことができない期間を作る。

 もうひとつは、育成選手として再契約することを前提として自由契約になった選手に対して、他球団と自由に交渉できる場を“公”に設けることだ。他球団がこうした選手に対して、オファーができれば、育成選手として残留するよりも良い条件で、移籍が実現する選手は増えるだろう。また、先ほど触れた、人的補償の対象から外す目的で行われる“仮の自由契約”もなくなるはずだ。

 育成選手制度は、多くの選手にチャンスを与えるという意味で有効なものではあるが、現在の状況は本来の目的とズレが生じていることは、やはり否めない。より多くの選手が才能を開花させる環境を整えるために、早急な見直しを図ることが必要だろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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