中国テニス選手の性暴力告発 3つの疑問から浮き彫りになる共産党幹部の権力闘争

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なぜ拡散を許したのか?

 一方、彭帥の告発は11月2日に行われた。石平氏は「6中全会の前だったということに注意する必要があります」と指摘する。

「なぜ彭帥さんが告発したかという1点目の疑問ですが、彼女は習近平一派の後ろ盾を得て告発したと考えるべきでしょう。彼女の訴えは事実に基づいたものだったはずです。しかし、それを中国共産党が許すかどうかは別問題で、彼女の告発はある程度、容認された節があります。要するに、中国共産党における権力闘争の一環だった可能性があるのです」(同・石平氏)

 中国ではネットの検閲が大規模に、しかも精緻に行われていることが知られている。中国共産党の利益を損なうような投稿は、即座に削除される。

 その鉄壁のシステムは、「万里の長城」が英語で「グレート・ウォール」と言うのになぞらえて、「グレート・ファイアウォール」と呼ばれている。

「本来なら張高麗に関するスキャンダルがネット上に書き込まれた瞬間、跡形もなく消去されるはずです。ところが、彭帥さんの投稿は拡散しました。これは中国当局がある程度、拡散を容認したと見るべきなのです」(同・石平氏)

監禁ではなく軟禁?

 石平氏は、中国外務省の反応に注目すべきだという。例えば、読売新聞は11月4日、「中国女子テニス選手、前副首相との不倫をSNSで告白…人気ドラマ『総理と私』視聴できない余波も」の記事で、中国外務省の反応を次のように伝えた。

《中国外務省の汪文斌(ワンウェンビン)副報道局長は3日、投稿について「私は聞いていない。これは外交問題ではない」と述べ、コメントを避けた》

「党が把握していない正真正銘の告発なら、外務省は全力で張を庇うはずです。性的関係の強要という暴露は大スキャンダルですから、党の名誉のため何を置いても擁護するでしょう。しかし、外務省担当者の回答は『私は聞いていない』でした。この発言に反論のトーンはありません。党が『積極的に打ち消す必要はない』と判断したことが透けて見えます」(同・石平氏)

 彭帥の告発が、中国共産党の許可を得て行われているとすれば、彼女が姿を消したという第2の疑問も説明がつく。

 Twitterでは「彭帥が監禁状態」とか「一族郎党皆殺し」などという投稿が目立つが、事実は逆の可能性があるという。

「あくまでも習近平一派の後ろ盾を得て告発したわけですから、彭帥さんは当局から守られている可能性が高いでしょう。日常生活には何の支障もないはずです」(同・石平氏)

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