中国テニス選手の性暴力告発 3つの疑問から浮き彫りになる共産党幹部の権力闘争
読売新聞オンラインは11月12日、「中国政府幹部との不倫暴露、女子テニス選手『安全で健康』…バッハ会長とテレビ電話」の記事を配信。YAHOO!ニュースのトピックスにも転載された。
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【写真】不倫関係を告発された張高麗元副首相は1946年11月生まれの75歳
連日のように報道されている彭帥=ほう・すい=(35)は、中国のプロテニス選手だ。女子ダブルスでは、2013年の全英(ウィンブルドン)と14年の全仏で優勝。シングルスの最高ランキングは14位を記録し、世界的な知名度を誇っている。
11月2日の深夜、彭帥は「中国版Twitter」とも呼ばれる「微博(ウェイボー)」を使い、中国共産党の最高幹部から性的関係を強要され、その後、不倫関係になったことを暴露した。
彼女が名指ししたのは張高麗(75)。2012年の第18回中国共産党大会で党中央政治局常務委員に就任。翌13年に習近平(68)が政権を握ると、張は副首相に就いている。それほどの重要人物だ。現在は引退したとされているが、最高幹部のひとりだったことは間違いない。
彭帥の微博における投稿は削除され、その後、彼女は約2週間も消息を絶った。当局の暗部を暴露したため監禁状態にあったのではないかと、国際社会が憂慮していた。
外交的ボイコット
彭帥の所在不明という異常事態に、テニス界は即座に反応した。ノバク・ジョコビッチ(34)は「団結して対応すべき」と訴え、大坂なおみ(24)は「仲間のテニス選手が性的虐待を受けたあと行方不明になった」ことに「ショックを受けている」とTwitterに投稿した。
国際社会も強い懸念を示した。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報道官は19日、彭の所在確認などを中国当局に求めた。
来年2月には北京冬季五輪が開催されるが、アメリカやイギリスなどは、首脳や閣僚、使節団の派遣を見送る「外交的ボイコット」を検討していると各国のメディアが報じている。
まさに世界を揺るがすトップニュースとなっているわけだ。しかしながら、どうしてこのような事態になってしまったのか、理解するのは難しい。担当記者が言う。
「大きく分けて謎は3つあります。1つは、なぜ彭帥さんは告発したのか。中国共産党の怒りに触れることは火を見るより明らかだからです。2つ目は、なぜ彭帥さんは姿を消したのか。中国共産党の関与を疑って当然ですが、実際はどうなのかという疑問です」
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