元公安警察官は見た ロシアのスパイを監視するために私が「釣り人」に変装したワケ

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30年間情報を流す

 ロシアのスパイは、釣り堀から車で5分ほどのところにあるビルに入ったという。

「彼は、民間団体が主催する日露経済のシンポジウムに参加していました。ロシアのスパイは、こういうシンポジウムや会合には参加し、そこで名刺交換して知り合った人を協力者に仕立てることがよくあります」

 ロシアは、日本のAI技術や軍事情報を狙っているという。

「昨年1月、ソフトバンクの元社員が会社の機密情報を不正に持ち出し、ロシアのSVR(ロシア対外情報庁)へ情報を流したことで警視庁公安部に逮捕されました。ロシアは、元社員と長く付き合うことで、段々と機密性の高い情報を得ようとしたようです。最初は図書券を与え、それから高級レストランで接待、そして現金を渡すというように徐々に対価を上げていったそうです」

 この元社員は、昨年7月に懲役2年執行猶予4年、罰金80万円の有罪判決を受けた。

「今年の6月にも調査会社の元社長が、ロシアのスパイに30年間に渡って軍事や科学技術関係の情報を流していたことで、神奈川県警に逮捕されています。データーベースサービスの会員に登録して半導体の研究開発や無人戦闘車両などの文献を入手し、スパイに渡していたのです。こうした事件は頻繁に起こっています。そのためロシアのスパイは常に監視する必要があるのです」

 スパイが誰かと接触するという情報を入手するたびに、公安捜査員は変装して監視するという。

「警察に協力的なバーにお願いして、バーテンに変装することもあります。そこでグラスからターゲットの指紋を入手することもあります」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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