元公安警察官は見た ロシアのスパイを監視するために私が「釣り人」に変装したワケ

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 日本の公安警察は、アメリカのCIAやFBIのように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。この9月『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、釣り人に変装してロシア人スパイを監視した話について聞いた。

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 公安捜査員は、スパイなどを監視する際、身元がバレないよう変装することが多い。

「例えば、ターゲットがマンションにいる場合。マンション内を移動しやすく、そこにいても不自然に見えないよう電気屋さん、水道工事業者、宅配業者などに変装します」

 と語るのは、勝丸氏。

「駅前や歩道などで胸にゼッケンをつけボランティアでゴミ拾いをしている人を見かけたことがあると思いますが、実はあれ、変装した公安捜査員だったりします」

 公安の各課には、様々な制服が全て揃っているという。

「たとえば、10人ほどの大人数で電気屋さんに変装する場合、さすがに1つの課で何枚も同じ制服はないので、他の課から電気屋の制服を借りてきます」

目の前をロシアのスパイが通過

 勝丸氏は現役時代、「サンドイッチマン」「釣り人」などに変装したことがあるという。

「公安捜査員がスパイとしてマークしていたロシアの外交官が居酒屋で日本人と会っているのを監視していました。隣の席に座り、彼らの会話を聞いていたら、断片的ですがロシアのスパイがJR駅の近くにある釣り堀の近くで誰かと接触することが判明しました」

 勝丸氏が所属していた公安部外事1課は、ロシアが担当だった。ちなみに外事2課は中国、3課は北朝鮮、4課はイスラム過激派などを担当している。

 そこで勝丸氏は、早朝から釣り人に変装して釣り堀の前で待機したという。

「帽子を被り、黒っぽいチノパンにポケットがいくつもあるベストといういでたちで、釣竿を持って、クーラーボックスの上に腰掛けました。釣り堀の開場を待つ人か、あるいは連れとの待ち合わせをしているように見えたはずです。普通の格好で、朝早くから駅付近に立っていると意外と人目につきますからね。訓練を受けたスパイであれば、それが公安であるとすぐに見抜いてしまいます」

 勝丸氏が釣り人の格好で待機していると、件のロシアのスパイが彼の目の前を通過したという。

「大使館の車に乗ったロシアのスパイが通過しました。どちらの方面に向かったのか、周りに配置している仲間の捜査員に連絡しました。スパイを監視する場合、5、6人のチームで行います。バイク、自転車、徒歩でそれぞれ追跡します」

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