及び腰の韓国を米国は経済制裁で脅す 「西側経済圏」復活で「中国閉め出し」を図る

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韓国半導体産業を破壊する武器

――韓国がWTO提訴を取り下げれば、日本は対韓輸出管理の体制を元に戻すのでしょうか。

鈴置:自民党の外交部会長の発言ですから、経産省や外務省はもちろん、官邸とも協議したうえでの答えであり、少なくともこうした考え方が政府の一部にはあるのでしょう。

 しかし状況は急速に変化しています。冒頭に説明した米国によるEUV露光装置の中国搬入阻止。中国はあの手この手でこの装置を入手しようとするに違いありません。

 もっとも簡単な手口が、韓国に「自国工場用」としてオランダから輸入させ、それを中国がこっそり買い取るやり方です。ただ、EUV露光装置だけでは高機能の最先端半導体は作れません。

 特殊な感光材であるEUVレジストが必要になりますが、製造しているのは日米のメーカーだけ。中国はEUVレジストも韓国経由で入手しようとするはずです。

 当然、それを見越した米国がEUVレジストの流通にも目を光らせて行くことになります。そして韓国への輸出管理を強化した3品目のうち、1つがこのEUVレジストです(「岸田首相から3匹目のドジョウ狙う韓国 米中対立で日本の『輸出規制』が凶器に」参照)。

 佐藤議員の見通し通りなら、韓国政府がWTO提訴を取り下げれば日本政府は管理体制を元に戻し、韓国へのEUVレジストの輸出に関しても1件ごとの審査を止めることになります。

 しかし、中国との戦いになりふり構わなくなった米国がこれにうなずくかは、はなはだ疑問です。産業面で中国とスクラムを組み続けようとする韓国に対しては制裁を科そう、との主張が語られる時代です。

 韓国の横流しを阻止するだけではなく、いざとなれば韓国工場で使うEUVレジストの輸出も止め、韓国の半導体産業を破壊する武器を確保しておくべきだ、と考えるのが普通の戦略的発想と思うのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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