日本の「家事道」を深めて世界に伝播させたい――高橋 ゆき(ベアーズ取締役副社長)【佐藤優の頂上対決】
移民受け入れ問題
佐藤 私が今後確実に出てくると思うのは移民の問題で、そこでもベアーズに注目しています。保守派の人は反対するけれど、経済的なことを考えると、この問題はどこかで踏み込まないといけない。
高橋 ベアーズがやっているのは移民受け入れではなく、国家戦略特区における家事支援外国人受入事業です。17年より参入しています。
佐藤 国家戦略特区というのは、おそらくは移民を受け入れるための第一段階だと私は見ています。ドイツと日本は勤勉性の面では似ています。しかし、ドイツの経済は調子いいのに、日本は20年間停滞している。その違いは何かといったら、移民を受け入れるかどうかなんですね。
高橋 日本では、なんで移民受け入れに反対する人が多いんですか。
佐藤 ある意味、大国であることを諦めてしまったからでしょう。戦前の日本はもっと多文化主義(マルチエスニック)でした。
高橋 ベアーズはこの4年間で総勢200名ぐらいのフィリピン人を受け入れています。帰国したりして、現在は170名ほどが在籍しているのですが、コロナがなければ、今ごろ300名とか400名はいたはず。それだけ今は需要のほうが伸びています。そして、日本で働きたいという人がフィリピンにはたくさんいるのに、コロナで往来ができないため、受け入れられないんです。
佐藤 ワクチン接種を2回受けて、PCRで陰性だったら受け入れればいいんですよ。だってフィリピンの女性たちはすごく勤勉でしょう。
高橋 勤勉だし、明るいです。イタリアの職人の親子のように、3代4代続けてメイドとして諸外国に行って、各国のご家庭をサポートしている人たちも多い。彼女たちはこの仕事を天職、天命だと思っています。
佐藤 彼女たちは職業に対する誇りもあるし、それはきっと日本にいい影響を与えてくれる。
高橋 彼女たちはご家庭ごとにサポートを専任制でやっていて、第二の家族みたいなお付き合いをしています。在留期間が最長で5年なので、5年で母国に帰るわけですが、彼女たちにとって日本は特別な存在になると思います。彼女たちのような人材が増えて、お互いの国が特別な存在になれば、真の世界平和へとつながっていくのではないでしょうか。
佐藤 日本の家庭の子どもさんがフィリピンに関心を持って留学することもあるかもしれませんね。
高橋 できればベトナムやモンゴルなど、いろんな国と私たちは親しくなりたいと思っています。
佐藤 エマニュエル・トッドというフランスの人口学者がいます。彼と話をしたときも、ベトナムと日本は家族制度が似ていると。だから、もし日本がベトナム人の移民を受け入れられないんだったら、日本の可能性はなくなると言っていました。ベトナム人は重要と思います。
高橋 ぜひ応援してください。
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