「だしのプロ」が明かすダイエット効果 香りが脳の報酬系を刺激して満足感が

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顆粒や粉末のだしに追いがつおを

 コロナ禍には関係なく、現代は精神面で注意が必要な人が多くなっています。うつ病とまでは診断されていなくても、心に問題を抱えている人が増えています。そんな中、食の方面からその部分にアプローチして、日々メンタルの状態をうまくコントロールしていけたらいいな、と思うのです。身体面だけではなく、精神面にとっても良いことが分かっただしが何らかの役割を果たせる可能性もあると思います。特に、かつおだしは香りの効果が高いので、例えば日々の生活に取り入れられることで言うと、料理人の方がよく仰るのは、普段使っている顆粒や粉末のだしに、追いがつおをするといい、ということです。追いがつおをすることで香りが立つし、おいしさのグレードがぐっと上がるのです。

 ただ、あまりに「だし、だし」と囚われてしまうのは良くありません。強迫観念のようになってしまっては逆効果です。年に数回はしっかりだしをとってみよう、とかイベント的に取り入れてみるくらいでいいと思います。

〈山崎教授は、だしを飲んで「ホッとする」のは日本人だけの感覚であり、だからこそ「食育」が重要なのではないか、と考えている。〉

「戻ってこられる味」

 京大での食育プログラム「本物のダシを味わうことは教養である」では、日本人の学生からは「おばあちゃんの家のにおいを思い出した」や「ホッとする味と香り」といった感想が寄せられたのに対し、留学生は「すごくうま味が強くて、おいしいのに油を使っていないことが驚き」という違う感想がありました。だしを飲んでホッとするのは、やはり日本で育ち、和食になじみがあるからこそ得られる感覚です。そういった感覚を、ぜひ食育を通じて育(はぐく)んでいけたらと思います。

 大阪にある、塩昆布で有名な老舗の「神宗(かんそう)」という会社と共同で、学生に毎日だしを飲んでもらって、1週間ごとに味覚の検査をする、という研究をしたことがあります。そこで分かったのは、うま味を理解できる学生が少ない、ということでした。うま味を感じられないというわけではなく、うま味を感じていても、それがうま味だと認識することができない。一致しないのです。甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の「五味」のうち、うま味が非常に分かりにくいのは確かです。うま味をどう表現していいのか分からない人は多いと思います。そのため、研究をするにあたっては、「うま味溶液」をなめてもらったりして、うま味を理解させてあげなければなりません。実験に使ううま味溶液とはグルタミン酸ナトリウムを溶かしたものです。そうして学習すると、うま味を認識しやすくなります。ただ、日常生活でグルタミン酸ナトリウム溶液を飲むことはほとんどありません。その代わりに、うま味を豊富に含むだしを味わうことで、わずかなうま味でも感じられるようになってきます。

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