「だしのプロ」が明かすダイエット効果 香りが脳の報酬系を刺激して満足感が

ドクター新潮 健康 食事

  • ブックマーク

マウスが“やみつき”に

 一緒にだしに関するイベントをやらせていただくこともある京都大学名誉教授で甲子園大学副学長の伏木亨先生の研究チームが、「マウスが、油脂や糖と同じくらいかつおだしに“やみつき”の反応を示した」という研究結果を発表しています。油脂や糖は、人間が本能的に欲しがるもの。油脂や糖を摂取すると、脳が「エネルギー量が多いものをよく摂取してくれた」と報酬を与える。脳の報酬系を動かし、快感刺激、すなわちご褒美を与えるのです。そのため油脂や糖は摂りすぎてしまい、肥満や糖尿病などに繋がってしまうわけです。

 伏木先生たちの研究で分かったのは、油脂や糖だけではなく、かつおだしも脳の報酬系を刺激する、ということです。一方、昆布だしでは、同じ結果にはならないといわれています。このかつおだしの効果には香りが関係していると報告されています。研究では、香りのない「だし味溶液」ではマウスはやみつきにならない、との結果が出ており、かつおだしの独特の香りが重要な役割を果たしていることが分かったのです。

 この研究により、だしを摂ると油脂や糖と同じような満足感を得られながらも、摂取カロリーは低く抑えられる、ということが分かってきました。和食が健康に良いといわれる理由の一つはだしだったということです。だしを飲んで痩せるというのも、この満足感が大きく寄与していると思います。カロリーが低いのに満足感が高い食材は多くありません。そういう意味で、だしは「痩せる食材」の一つにカウントしていいと思います。ただ、このだしの満足感をダイエットに利用しようとする場合、使い方には気をつける必要があります。例えば、だしを使った肉じゃがを毎日食べていて痩せるかというとそうではない。工夫の仕方が重要です。

「ホッとする」理由

 だしを飲んだり、香りをかぐとホッとする、という感覚は多くの人が経験したことがあるのではと思います。それを客観的な指標で観察したいと思い、「出汁がヒトの自律神経活動および精神疲労に及ぼす影響」という論文を共同で書きました。自律神経は身体において最も基本的な機能を調節している仕組みであり、交感神経と副交感神経の二つから成り立っています。この二つの神経は互いにバランスを取り合いながら、例えば呼吸や消化、分泌、代謝、体温などを自律的に調節してくれています。交感神経は別名、闘争・逃走の神経とも呼ばれ、興奮やストレス状態にある時に活発になります。一方、休息中などリラックス状態にある時に活発になるのが副交感神経です。

 だしを飲んだ時、自律神経の動きはどうなるのか。20名程度の学生に合わせだしを飲んでもらってその動きを観察したところ、だしを飲んで10分から15分後に副交感神経が活発になっていることが分かりました。だしの香りをかいだだけでも同じ反応を示しました。だしを飲むことで満足感を得られるだけではなく、ホッとする、気分を落ち着かせるような効果があることが分かったわけです。

次ページ:顆粒や粉末のだしに追いがつおを

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[3/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。