日本シリーズ 32年前の巨人「香田勲男」…崖っぷちから流れを劇的に変えたヒーローたち

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“雨のち快晴”のドラマ

 一歩間違えば“逆シリーズ男”になっていたかもしれない不調の1番打者が、ひとつの四球をきっかけに逆転日本一のヒーローに変身……そんな“雨のち快晴”のドラマを演じたのが、2016年の日本ハム・西川遥輝だ。

 4年ぶりに日本シリーズ進出をはたした日本ハムは、第1戦、2戦ともに1対5で広島に連敗。劣勢に立たされた。第3戦も7回まで1対2とリードを許したが、終盤は点の取り合いとなり、3対3で延長戦に突入する。

 10回、日本ハムは1死から1番・西川が四球で出塁。この日の西川は、5回の同点機に捕邪飛に倒れるなど、通算12打数2安打と打撃不振だったが、膠着した局面を何とか打開しようと、2死から一か八かの二盗を成功させた。

「打てないときは足で」とチャンスを広げ、勝利へのお膳立てをしてくれた先輩の執念に、3番・大谷翔平もバットで応える。渾身の右前タイムリーで鮮やかなサヨナラ勝ち。この1勝で流れも日本ハムへと変わっていく。

 そして、西川は2勝2敗で迎えた第5戦で、押しも押されぬヒーローになる。1対1の9回にシリーズ史上2人目のサヨナラ満塁弾。15打席連続無安打の不調にもかかわらず使いつづけた栗山英樹監督を「自分を殺しながら、チームのためにやってきたご褒美というか、野球の神様はちゃんと見ていてくれるんだな」と感激させた。

 さらに西川は、第6戦でもシリーズタイの三塁打2本を含む3安打2打点の活躍で、チームの10年ぶり日本一に貢献。「途中まで何もできなかったが、最後に結果を出せて良かった」と会心の笑みをもらした。

 今年の日本シリーズでも、流れを劇的に変えるヒーローが現れるだろうか。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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