神戸5人殺傷事件、2回目の鑑定は5分程度 「精神鑑定」は犯人の意のままになる?
心神喪失であったと簡単に証明できるのか
ちなみに竹島被告は、外見は人と同じだが意識はない「哲学的ゾンビ」という哲学用語を、ネットで見知っていたそうだ。
「このように、本人の思考なのに、女性から言われたと完全に思い込んでしまうのは、統合失調症の症状です。実際、公判での被告の説明は一貫し、証拠もついてきていた。事件前日、礼服を着て神社に行った映像は、神社の防犯カメラに映っていました。事件の2日前、母親と一緒に妹の家に行った際、“トイレの動画を撮って”という最初の幻聴が聴こえたそうですが、実際、スマホで撮った動画が残っています。だから、妄想があったという点については、検察側と弁護側の間に争いがなく、“どれだけ信じきっていたのか”という程度の問題でした」
検察は2人の精神科医に鑑定を依頼。そして、
「1人目の医師は11回も被告に会い、“妄想の圧倒的影響下で犯行に及んだ”と判断。一方、2人目の医師は“犯行を思いとどまる能力があった”と判断したものの、1回、5分ほどしか面談できていなかった。公判には弁護側の証人として、別の精神鑑定の専門医も出廷し、1人目の鑑定を支持。判決は、1人目の医師の鑑定を採用した格好です」
元裁判官で弁護士の高橋隆一氏は、
「“疑わしきは罰せず”という刑事裁判の原則において、大きな要素になるのが“責任能力の有無”。責任能力がなければ刑事責任を問えません。仮に、人を殺すという故意があったとしても、それが統合失調症による妄想に支配されていたことになると、“心神喪失”で無罪という結論に導かれてしまうのです」
と話すが、ここで疑問が湧かないだろうか。すなわち“心神喪失”であったと、そんなに簡単に証明できるものなのか。それに、どうして2人目の医師の鑑定は5分で終わったのか。
甲南大学名誉教授の園田寿氏(刑法)は、判決文からの判断に加え、自身が精神医療審査会委員を務めた経験から、「被告人の妄想はかなり強かったのではないか」と言いながらも、精神鑑定の問題点を説明する。
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