立民惨敗に見る「とりあえず勝つ」の重要性 有権者が求める政策を見抜けず(中川淳一郎)
公示前勢力の「110」から「96」に減らした衆議院選挙惨敗の立憲民主党は今後の戦略、考え直した方がいいです。枝野幸男代表は9月7日、事実上の政権公約「政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項」の第1弾として、以下を挙げました。
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〈1.補正予算の編成、2.新型コロナ対策司令塔の設置、3.2022年度予算編成の見直し、4.日本学術会議人事で任命拒否された6名の任命、5.スリランカ人ウィシュマさん死亡事案における監視カメラ映像ならびに関係資料の公開、6.「赤木ファイル」関連文書の開示、7.森友・加計・「桜」問題真相解明チームの設置〉。これについて「#政権取ってこれをやる」のハッシュタグをつけ、情報発信するよう呼びかけました。
第2弾は「多様性を認め合い『差別のない社会』へ」を掲げ、選択的夫婦別姓制度、LGBT平等法、DV等の被害を受ける女性への支援、差別防止のための人権機関設置と多文化共生の取り組みなどを訴えた。
第1弾の1、2、3については分かります。しかし、4~7は「#政権取ってこれをやる」ものでしょうか。いずれも大事ではありますが、選挙に勝つという面においては「これじゃないんだよ」感があまりにも強過ぎた。勝った後にキチンと進めればよかったのです。
彼等は「社会の空気感」を読むのがヘタクソです。4~7は、朝日・毎日をはじめとした左派新聞が猛烈に批判したことと、ツイッター上で常に政権批判を繰り広げるような熱狂的アンチ自民党の人々が主張したことだったのです。これらを見て「社会はこの件に絶大なる怒りを持っている!」と解釈し、政権公約第1弾にしたのです。
ウィシュマさんご家族、赤木さんご家族にとっては大事な問題ですが、多くの有権者にとっては結局対岸の火事でしかないのです。モリカケ・桜についても「それよりコロナだろ!」「賃金上げろ!」という意見の方が圧倒的多数。立憲民主はもう少し有権者に身近な課題を選挙戦で掲げる方が「とりあえず勝つ」ためには大事だった。
4~7、そして第2弾について軽視しているのか!なんて言わないでください。あくまでも衆議院選挙の「政権公約」としては細か過ぎるし、有権者が喫緊で求めることとは遠過ぎたのです。
選挙では大局観をいかに示すかが大事なのに、立憲はいわゆる「エコーチェンバー」(閉鎖空間内での言論が反響し、より強化され増幅する)現象に陥った。
その点、09年の民主党による政権奪取は見事でした。自民党閣僚の「産む機械発言」「絆創膏大臣会見」「ナントカ還元水問題」など、いろいろ不祥事があった中、追い風は吹いていた。そこで民主党は「子ども手当」「高速道路無料」「ガソリン税の暫定税率廃止」「諸悪の根源である公共事業見直し」など、有権者からすれば自分の懐が豊かになると思えるマニフェストを出し、希望を与えた。
ここでとりあえず選挙に勝つことが重要であるとは分かったはずなのに、12年以降連戦連敗の彼らは完全に熱狂的アンチ自民党と熱狂的支持者という少数派におもねることばかり言うようになった。勝てるワケないわ、こりゃ。