「巨人の星」でも紹介された“鋭い判定”…日本シリーズで起きた三大事件

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球審の顎に左ストレート

 11月20日からプロ野球の日本シリーズが開幕する。日本一を決める頂上決戦とあって、過去にはひとつの判定をめぐって、大騒動に発展したこともあった。昭和40年代から平成にかけて、日本シリーズを舞台に起きた三大事件を紹介したい。

 シリーズ史上初の退場劇が起きたのが、1969年10月30日の巨人vs.阪急第4戦である。0対3と劣勢の巨人は4回、土井正三、王貞治の連打で無死一、三塁。このチャンスに4番・長嶋茂雄は2ストライクから宮本幸信の3球目を空振りしたように見えたが、岡田功球審の判定は「ボール!」。捕手の岡村浩二は「振ったじゃないか」とアピールし、西本幸雄監督も激しく抗議したが、判定は変わらない。そして、これが“騒動の伏線”となる。

 長嶋はフルカウントから空振り三振に倒れたが、一塁走者・王がスタート。岡村が二塁に送球するのを見て、三塁から土井も本塁に突っ込む。二塁手がすぐさま返球し、クロスプレーになった。

 土井は岡村のブロックに阻まれ、タッチアウトと思われたが、岡田球審の判定は「セーフ!」。怒った岡村はミットをはめたまま岡田球審の顎に左ストレートを繰り出し、退場を宣告された。「あれは絶対の自信を持ったブロックだった。完全なアウトだった」というのが言い分だった。

ほとんどの者が「誤審」と……

 西本監督も「巨人が見逃せば全部ボールになる。ホームを突けば全部セーフになるのではかなわん。あれがセ・リーグを代表する審判というのですか」と口を極めて非難した。

 これに対し、岡田球審は「岡村捕手はベース真上でブロックしていたが、両足の間が少し空いていた。土井選手の足がそこへ入ったことを確かに見た。長嶋のときは、捕手が立ったので一瞬陰になったが、前後の状況から振ってないと感じた」と説明した。

 だが、土井が岡村に跳ね飛ばされたように見えたことから、テレビ観戦のファンを含むほとんどの者が「誤審」と思い込んだ。ところが、新聞写真には、土井の左足が岡村のタッチをかいくぐって本塁ベースを踏む瞬間がハッキリ写っていた。

 非難の声は一転「鋭い部分を見ていた」の賛辞に変わり、このエピソードは、アニメ「巨人の星」第148話でも、一部設定を変えて紹介されている。

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