「紀州のドンファン」破産申立てで「13億円」遺産分捕りの「田辺市」 遺言書に則し債権継承
「いごん」
「紀州のドンファン」こと野崎幸助氏(享年77)を急性覚醒剤中毒で死に至らしめた55歳年下の元妻、須藤早貴被告は否認を続け、明確な物証もないままである。その最中、野崎氏が営んでいた会社の破産手続開始が決定した。この破産を巡っては、様々な思惑が入り交じっている。
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【写真4点】ドレスアップした元妻の須藤被告 “整形”をしながら逃避行していたという
野崎氏が和歌山県田辺市で創業した酒類販売及び貸金業の「アプリコ」、関連会社「アンカー」。今年9月21日付で、債権者である第三者の申し立てに基づき、和歌山地裁が両社の破産手続開始を決定した。
しかし、現金商売をモットーとする野崎氏は、これまで銀行など金融機関からの融資を避けていたとか。となると、債権者である第三者とは誰なのか。
結論から先に言えば、それは田辺市だった。
19年、田辺市は、総額13億5000万円というドンファンの遺産受け入れを表明している。その根拠となっているのは、アプリコの元役員が野崎氏から生前預かったとされる遺言書。「いごん」と題され、「全財産を田辺市にキフする」と赤色のサインペンで記されていたものだ。
過払い金
アプリコの関係者によると、
「野崎社長は節税目的で、アプリコに6億1200万円、アンカーにも1億3700万円の事業資金を提供していました。田辺市は“いごん”に則して、その貸付債権も継承し、アプリコとアンカーの債権者という立場を得たわけです。それが、破産申し立てを可能にしたからくりでした」
だがこの遺言書については、20年4月、野崎氏の遺族が無効確認を求めて和歌山地裁に提訴した。現時点では遺言書の真贋がはっきりしていないうえ、早貴被告が裁判で殺人犯だと確定すれば、民法上、相続人になり得ない。不確定要素が山積みなのに、なぜか田辺市は遺産の受け取りに邁進中なのだ。
実は、そのトバッチリを被った田辺市民もいる。アプリコに過払い金の返還を求めた訴訟の原告である。訴訟と並行して和解交渉も進んでいたものの、今年4月、アプリコの社長である早貴被告の逮捕によって交渉は一旦中断。すると6月に入ったところで、田辺市の弁護士が、「破産を申し立てるから、和解はできません」と原告側に通告しているのだ。
市民の裁判に横槍を入れてまで、ドンファンの遺産にこだわる田辺市。受け入れを表明したために、引っ込みがつかなくなってしまったか。