落合博満、秋山幸二、糸井嘉男…世紀の“大型トレード”はこうして成立した!

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“球界の寝業師”が剛腕を発揮

“球界の寝業師”といわれた根本陸夫が、3対3の大型トレードで剛腕を発揮したのが、ダイエー監督時代の1993年オフだった。同年、ダイエーは最下位に沈み、前身の南海時代も含めて16年連続Bクラス。負け犬根性がしみついたチームを常勝軍団に変えようと考えた根本監督は、一世一代の“大手術”に踏み切る。

 3年連続二桁勝利の村田勝喜と前年首位打者、盗塁王の二冠を獲得した佐々木誠に左腕・橋本武広を加えた3人を放出し、西武・秋山幸二、渡辺智男、内山智之との交換トレードを成立させたのだ。交渉は秘密裏に行われ、事前に漏れるのを防ぐため、中内功オーナーもテレビのニュースでトレード成立が報じられるまで何も知らされなかった。

 当時このトレードは、30歳を過ぎた秋山、故障持ちの渡辺に代わって、24歳の村田、28歳の佐々木を獲得した西武が得をしたという見方が大半だったが、結果的に大きな成果を挙げたのは、ダイエーのほうだった。

 村田、佐々木ともに西武ではあまり活躍できなかったのに対し、ダイエーは秋山が99年の初優勝に貢献し、常勝ホークスの礎を築いたばかりでなく、ソフトバンク監督時代にも2度の日本一達成と、選手、監督の両方で実績を残した。成立時の評価が10年、20年後に大きく変わっていくのも、トレードの醍醐味だ。

「糸井さん、トレードとか、ありえん」

 近年で話題を呼んだ大型複数トレードといえば、2012年オフの日本ハム・糸井嘉男、八木智哉とオリックス・木佐貫洋、大引啓次、赤田将吾の2対3トレードが挙げられる。

 糸井は同年、4年連続打率3割超をマークし、チームの3年ぶりVに貢献したが、契約更改で1000万円増の年俸2億円を保留。さらに翌年のポスティングでのメジャー移籍を申し入れ、認められない場合は国内球団へのトレードを訴えた。

 この一件で、糸井を「近い将来出ていく選手」と見なした球団側は、年明け後の1月23日、あっと驚く大型トレードを成立させて電撃的に発表した。

 放出されるとは夢にも思わなかった糸井は、先に呼ばれた八木がオリックスへのトレードを報告すると、「(チームは別々になるが)お互い頑張ろう」と激励したという。それだけにトレードを告げられたときはショックが大きく、頭が真っ白になった。

 そして、この電撃トレードは、元チームメイトのダルビッシュ有も「糸井さん、トレードとか、ありえん」とツイートするほど、関係者やファンにも大きな衝撃を与えた。

 だが、日本ハムはすでに生え抜きスター放出後の布石も打っていた。糸井の抜けるライトに期待の“ドラ1ルーキー”大谷翔平を入れる中長期的プランでチームの再強化を図ったのだ。

 大谷は投打二刀流でブレイクし、16年の日本一に貢献。糸井もオリックス移籍2年目に首位打者と、双方ともにプラスに働いたのは周知のとおりだ。トレードの効果は、交換相手以外の選手にも影響を与えるという意味でも、大きなものがある。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

2021年11月17日掲載

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