【袴田事件と世界一の姉】弁護団も驚愕した「巖さん」の釈放 急きょテレビ局が確保したホテルへ
検察による証拠の隠蔽
袴田事件については、2013年の秋ごろからメディアが「2014年の春ごろに再審の可否が判断されそうだ」という見通しを盛んに報道し始めた。その根拠のひとつが、再審請求審では原田保孝裁判長や村山裁判長の訴訟指揮で、検察が初めて約600点の証拠を開示したことだった。
その中で、5点の衣類のうちズボンに付いていた「B」というタグについて、検察が重要な証拠を隠していたことが判明した。東京高裁の控訴審で、5点の衣類を袴田さんが実際に着る実験をした際、ズボンが小さすぎて腿までしか上がらなかった。弁護団はこれを「袴田被告の衣類ではない証拠だ」としたが、検察は「被告人が太った」とか「ズボンが味噌に浸かって縮んだ」などと主張していた。ところが開示された調書には、「Bは大きさではなく色を示すアルファベット」と話した製造メーカーの証言が含まれていた。それにもかかわらず、県警と静岡地検はこれを「肥満体向けのサイズを示す」と嘘をつき、「犯行時に履けたはず」と主張していたのだ。
また2013年11月には、袴田さんの同僚が袴田さんのアリバイを供述していたにもかかわらず、検察はアリバイがなかったような供述に捏造していたことも発覚した。さらに12月には、前述のDNA鑑定を弁護側が提出した。そして翌年3月27日の劇的な「再審開始」に至る。
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