【袴田事件と世界一の姉】弁護団も驚愕した「巖さん」の釈放 急きょテレビ局が確保したホテルへ

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弟との再会

 この日、午後5時頃、巖さんは東京拘置所から釈放された。ひで子さんが振り返る。

「東京拘置所に行くと職員から、巖が『もう終わってるんだ。帰ってもらってくれ』と言っていたと聞かされたんです。仕方ないので帰ろうとしていたところ、職員に応接室に呼ばれて『お金をお返します。今ご本人が来ます』と言われました。そして巖がぽつんと現れて『釈放された』って言ったんですよ。もう、驚いて、驚いて。手を取り合って喜びました」

「帰ってもらってくれ」と言っていた割には、なぜか姉に会うことを拒否しなかった。ハグするような世代ではないから、手を取り合ったのだろう。お金とは巖さんが拘置所内で所持していた金のことだ。

「拘禁症」の影響から巖さんは、「俺に姉などいない」などと言って面会を拒絶していたため、ひで子さんが弟に会えたのは2010年8月以来のことだった。その久々の再会が「アクリル板越し」ではなかったのだ。78歳になった巖さんは、髪も薄くなり太っていた。

 その後、巖さんは、ひで子さんを密着取材していたテレビ朝日が手配したハイヤーに乗り込んだ。世紀の釈放劇の報道は同局の独断場で、多くのメディアは歯噛みした。当の巖さんは、ホテルに到着するとそのまま寝てしまったそうだ。

 翌日、弁護団とともに会見したひで子さんは「(昨夜)巖は夜中に暑がっていたけど、自分でちゃんと服も着替えられるようです。でもホテルから東京湾を見せたら、巌は『ここは大井川かなあ』って言ってたんですよ」と笑わせた。

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