「脱炭素」で得するのは中国だけ? EVの原材料は中国頼り、550万人の雇用も崩壊

国際 中国

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自動車産業の大転換

「中国では全電力の6割を石炭火力に依存しています。その石炭価格が高騰。また政権の温暖化対策目標を実現するために、各地で計画停電や電力の供給制限が実施されています。工場が稼働できなかったりする地域もあり、経済成長率も鈍化しています」(中国事情に詳しいジャーナリスト)

 かたや日本は、菅義偉政権で「2050年カーボンニュートラル」を宣言。中国より10年も早い目標を設定し、35年には新車販売をすべて電動車にするとして、「脱ガソリン車」の意向を鮮明に。小泉進次郎前環境相も意欲的だった。

 先の加藤氏によれば、

「日本政府は自動車産業界に電気自動車(EV)への転換を促していますが、最初からガソリン車やディーゼル車を禁止するような政策は、技術の選択肢を自ら狭め、日本の強みを失うことになりかねません」

 強み、すなわち日本特有の技術力が失われる可能性があるという。

「日本は世界で自動車のエンジンを設計できる数少ない国で、EV化はこれまで研究・開発してきた世界一のエンジンなどの内燃機関や、日本の厳しい排ガス規制に対応して作ったガソリン車の部品など多くの技術を奪います。EV車になれば自動車部品の数は圧倒的に少なくなるものの、エンジンとトランスミッション(変速機)が、バッテリーとモーターに変わり、EV車製造のコストの約4割はリチウムイオン電池となります。国内で電池を製造できればよいのですが、原材料は中国に握られている。もし中国製の電池頼みになれば、日本の自動車産業は中国にその心臓部を牛耳られることになります」(同)

 EV車への転換へ“ハンドル”を切ることは自動車産業の大転換を意味するのだ。加藤氏が続ける。

「自動車産業は550万人が従事する70兆円の総合産業。部品のみならず組立、販売や物流など、多岐にわたり国民経済を支えています。EV化はその雇用も破壊しかねないのです」

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