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「政府は何をすべきか分かっていない」

 医師でもある東京大学大学院法学政治学研究科の米村滋人教授は、

「政府の示した骨格は、第6波への備えが必要だという点は正しいですが、具体案は相変わらず、何をすべきか分かっていない」

 と、手厳しい。

「病床数を1.2倍にするといっても、いままで増やせなかった理由を分析して、これまでと違いこうアプローチをするから増える、と示さなければ、説得力がありません。個々の医療機関に2、3床ずつ増やしてもらうだけでは、限界があります。私は以前から、複数の医療機関が人を派遣し合い、患者さんも移動できるようにすべきだと言っています。そうした環境整備を同時に進めなければ、増える病床も増えません」

 そして「協議会方式」の導入を提案する。

「ベッドは動かせず、動かすとすれば人。軽症、中等症、重症、回復病床の区別を明確化し、病院ごとの役割分担をはっきりさせたうえで、医療従事者が病院間をスムーズに移動できるように、各医療機関が連携する。複数の病院の間で、足りないところを補い合うのです。しかし、そういう仕組みができていないところを見ると、政府には医療現場が見えていません」

 その点、神奈川県の担当者は「ベッドより人材の確保が難しい」と言い、

「臨時医療施設を設けても、寄せ集めの集団だと、チームワークがバラバラになってしまう。県では医療法人の徳洲会に運営を委託することで、チームとして動ける現場を作っています」

 と説明する。神奈川県では、医療法人沖縄徳洲会の湘南鎌倉総合病院に隣接する土地に、中等症専用の医療施設を設けた。そこで酸素投与が必要な患者や、65歳以上または基礎疾患があり、重症化リスクが高い患者、自宅や宿泊施設での療養が難しい患者らを受け入れ、24時間態勢で診療を行った。そして運営を、沖縄徳洲会に委託したのだ。

 米村教授の提言に近い実践と思われるが、そうした仕組み作りも、すべて都道府県に任されているのが問題だろう。

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