白人の記録を破らないように脅迫され… 黒人差別と闘い本塁打記録を打ち立てたハンク・アーロン(小林信也)

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ジャッキーの夢

“黒人初のメジャーリーガー”ジャッキー・ロビンソンのメジャー・デビューは47年。マイナー時代、遠征に来たジャッキーとアーロンは会った経験がある。地元の黒人少年と話す機会を作ってくれたジャッキーはアーロンに夢と憧れを与えてくれた。『ハンク・アーロン自伝』(講談社)に次のように記されている。

〈一九七二年のシーズン後、私の決心をさらに強固にすることが起こった。十月の終りに、ジャッキー・ロビンソンが亡くなったのだ。(中略)彼の葬式には昔の黒人選手が大勢来ていた。しかし、現役の選手がほとんど出席していなかったことに私はショックを受けた。ジャッキーの夢を絶やしてはいけないと、私は強く誓った。そのための最良の方法は、私が野球の歴史上、一番多くのホームランを打った男になる以外になかった。そう思わせてくれたのはジャッキーである〉

 ジャッキーの夢とは、黒人がMLBの監督やオーナーになる未来だった。アーロンは引退後、ブレーブスの球団副社長などを歴任。今年1月、86歳で世を去った。

小林信也(こばやし・のぶや)
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。「ナンバー」編集部等を経て独立。『長島茂雄 夢をかなえたホームラン』『高校野球が危ない!』など著書多数。

週刊新潮 2021年11月11日号掲載

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