太る元凶「ニセの食欲」を抑え込む食事術とは 別腹が生まれるメカニズム、12時間以内に3食が理想

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大事な「体内時計」

 体内時計の司令塔(中枢時計)は、食欲コントロール機能と同じく、視床下部にある。この中枢時計が光を感じて時計を合わせると、臓器などに存在する時計遺伝子(末梢時計)へ神経やホルモンを介して時刻情報が伝えられる。末梢時計は中枢時計からの時刻情報に加え、食事や運動(活動)などの刺激によってリセットされ、24時間のカウントを始める。そのため光を浴びて活動を始めたのに、朝食をとらないと、体内時計の働きがバラバラになり、全身で正しいリズムが刻めなくなってしまうのだ。

「もともと昼まで寝ている人で、昼から活動するならいいでしょう。ですが朝起きて、朝食抜きで仕事を始めてしまうと、体は動いていますので全身のリズムが揃いません。各体内時計が揃って正しいリズムを刻めていれば、午後から夕方にかけてがエネルギーを最も使う時間になり、消費量が増えます。でもこのリズムが崩れると、“省エネ”の体になって、ピークの山が下がるのです。適切なタイミングでホルモンなどが分泌されないため、食欲の増減はもちろん、代謝の働きが悪くなるということです」(同)

 しかし仕事が忙しかったり、会食があったりなどして、“12時間以内”が難しいという人もいるだろう。その場合は「分食」がお勧めだ。

「夕食より前に、少し食べておくのです。そうすると仕事が終わった後に食べるとしても空腹感がそこまで大きくなく、必要以上に食べてしまうことも少ない。血糖値の上昇も分散されてゆるやかになります」(同)

 ハメを外して飲み食いしすぎてしまったら、翌日は絶食するか、夜を控えめに。

 また1週間のうち2日程度の不規則なら、体内時計が乱れにくいことがマウスの実験から報告されている。

 体内時計を規則正しく働かせれば空腹感は抑えられ、適正な食欲になるが、「それでも報酬系は強敵」と大池氏が補足する。

 食後には「甘いものは見ない」など、新たな食欲が脳に伝わらないように、できる限り五感をシャットアウトするのがいい。

 食べるのが止まらない人は、満腹感を得やすい食べ物を意識しよう。

「イノシン酸やグルタミン酸などの旨味成分は、満腹感を得やすく、食欲を抑える働きがあります。イノシン酸は鰹節に、グルタミン酸は昆布やパルメザンチーズ、トマトなどに含まれます。鰹節と昆布でだしを取る味噌汁は、満腹感を得る最強の食べ物です」(望月氏)

 ヨーグルトの上澄み液(ホエイタンパク質)や緑茶に含まれるカテキンも満腹感を生み出す。

 そこでまずは「いただきます」の前に温かい緑茶。そして一口めは「味噌汁」を飲み、食事前半で主菜をとる。タンパク質は満腹感を持続させることがわかっているからだ。そして食後にヨーグルトを取れば血糖値上昇を抑えられ、かつその後の空腹感が起きづらくなる。「ニセの食欲を抑えこむ」だけではなく、「おなかいっぱいと感じられる食べ方」に切り替えたい。

笹井恵里子(ささいえりこ)
ジャーナリスト。1978年生まれ。「サンデー毎日」の記者を経て、フリーに。医療や衣食住の生活分野を中心に執筆活動を続ける。著書に『潜入・ゴミ屋敷』『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』など。

週刊新潮 2021年11月11日号掲載

特集「『味覚の秋』に知っておきたい 太る元凶“脳内ホルモン”に騙されるな! 『ニセの食欲』を抑え込む食事術」より

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