太る元凶「ニセの食欲」を抑え込む食事術とは 別腹が生まれるメカニズム、12時間以内に3食が理想
舌の悦びは最も素朴な幸福である。そして満腹は次なる幸福だろう。だからなのか、それはしばしば暴走して体形や体調に大きな影響を及ぼす。食欲に振り回されないためにはどうすればいいのか。食欲の正体を突きとめてわかった、適切な「満腹食」とは?
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穀物が収穫の時期を迎え、果物や芋類、きのこ、青魚など旬の食材も豊富なこの季節。私たちの体は気温低下に対して、体温保持のために熱を作る。だから暑い時期よりも今のほうが消費エネルギーが増え、それが食べたいという欲求を高めるのだ。「食欲の秋」といわれるゆえんである。
おいしそうな食べ物を前に食欲を感じるのは、人の本能として当然のことだ。しかし現代人は、食べたばかりなのに口寂しい、デザートを目にしたり、おいしい匂いがしたら食べたい、と感じがちである。太るとわかっているのに、間食が止められないこともよくある。なぜ私たちの食欲は時にとどまることなく、暴走してしまうのだろうか。
空腹を感じ、実際の食行動に結びつけるのは「脳」である。脳の発達やメカニズムを研究する東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授によると、「食欲にまつわる脳の機能は『視床下部』の働きが基本」という。
「視床下部は脳の『間脳』に位置します。ここが生命の維持に関わる重要な機能を担っていて、睡眠と覚醒や体温調節、そして空腹か満腹かという判断もしているんです。動物実験で視床下部を壊すと、いつまでも食べ続けるなど、食欲のコントロールがきかなくなると報告されています」
脳は全身からさまざまな情報を吸い上げる。血糖値の情報、そして胃からは空腹になると食欲を増進させる「グレリン」というホルモン、脂肪細胞でたまった脂肪の量が多くなると「レプチン」という食欲を抑制するホルモンが分泌され、これらが視床下部の「弓状核」に集められる。
弓状核には食欲を高める「摂食中枢」と、食欲を抑える「満腹中枢」の二つが存在していて、各種情報が届くと、実際の食行動に反映されるというわけだ。
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