新庄ビッグボスの1週間を検証 実は野村ID的志向で、ワゴン車と竹竿も使う必要はない?

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 新庄剛志ビッグボスの勢いが止まらない。就任記者会見は午後のワイドショーで生中継されるなど大きな注目を浴び、セパともにクライマックス・シリーズ直前にもかかわらず、その後の報道でも日本ハム・新庄ビッグボスがトップを彩り続けた。同じ日に監督就任を発表した中日・立浪和義監督、ソフトバンク・藤本博史監督との注目の差は歴然としている。

 会見の4日後には沖縄に飛んだ。これを新庄ビッグボスは、「明日から沖縄に入りし 速攻 沖縄そば食べに行こう」「ただそれだけで今日の1日楽しんじょう」と続けてツイートし、まるでリフレッシュ目的のように発信したが、実は沖縄・国頭で行われている秋季キャンプの視察予告だった。

 沖縄でも、大勢の報道陣の期待に応え、午前と午後でジャージーを着替えるなど、話題を提供し続けた。派手なファッション、メディアにもファンにも受ける発言・行動は、コロナ禍で沈みがちな日本社会には願ってもない明るさで、これに文句を言う勢力は少ない。
 私もそのひとりで、決して新庄監督に異論をはさむものではない。ただ一応、スポーツライターの立場から指摘もしておこうかと思い、この原稿を書いている。

野村ID的な志向

 抱腹絶倒、メディアとファンを喜ばせ続けた記者会見の質疑応答で、ガクッと来た瞬間があった。テレビ朝日の安藤萌々アナウンサーが「冒頭でプロ野球を変えて行きたいとおっしゃっていましたが、まずはどんなところから変えて行きたい?」と質問すると、新庄ビッグボスはこう答えた。

「まずは作戦面。ヒットを打たなくても点は取れるんだぞ、という作戦面での面白さ。こんなやり方があるんだ、僕たちがまず発信して他の球団に真似されるような」

 つまり、ノーヒットで点を取る方法を考えてお見せします、と予告したわけだ。新庄独特の言い回し、その華やかさで聴く者はなんとなく「オーッ」という小さな驚きに包まれたが、私には苦笑いしかなかった。そんな、昭和の時代の高校野球みたいな……。野球的にはノーヒットで点を取るのは高度で有効な戦略だろうが、スタンドを沸かせる観点から言えば、およそ地味でつまらないイメージしか浮かばない。

(ずいぶんとハードルを上げたなあ)

 好意的に言っても、それが素直な感想だ。ノーヒットで点を取ってスタンドが大喜びする野球って、どんなものだろう? 点を取ったファイターズ・ファンだけでなく、相手チームのファンや全国の野球好きが「さすが新庄!」「すごい!」と唸るような新戦法が果たして発明できるのか!?

 私なら単純に、「サインなんか出さず選手に任せて、自由に打って走って、打って打って打ちまくる野球です!」とでも言いそうだが、どうやら新庄ビッグボスはそうでもないらしい。案外、野球を深く考え、野村ID的な志向を持っている傾向が記者会見から窺えた。

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