クーポン配るなら現金でくれ…また公明党に負けた岸田総理が「家なき子」になる可能性

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かつての「下駄の雪」から…

 当然ながら、岸田氏が3年間の自民党総裁任期中に目指す憲法改正は一気に遠のく。現状、与党の議席は294席で、日本維新の会(衆院41議席)を含めた改憲勢力は発議に必要な議席の3分の2(310議席)を大きく上回っている。しかし、32議席の公明党が抜けてしまえば、自民と維新の合計(303議席)だけでは足りなくなる。

 選挙区で「8000票減」なら合計は「275」となり、「2万票減」ならば「245」だ。立憲民主党や共産党など5野党の枠組みから距離を置いた国民民主党(同11議席)を加えたとしても、「自民+維新+国民民主」の合計はそれぞれ286、257議席。過半数は上回るものの「2万票減」のケースでは、すべての常任委員会で委員長を出した上で過半数の委員を占めることが可能となる「絶対安定多数」(261議席)も下回ることになる。

 一昔前は自民党の意向には従う「下駄の雪」と揶揄された公明党だが、昨年からは連立離脱もちらつかせながら政策実現を訴える「主張する公明党」へと変貌した。

 自民党内では高市政調会長が、10万円給付案をめぐり「自民党公約とは全く違う」と公明案を潰しにかかった。人事面でも安倍元首相の意向をあえて無視するなど反発を招いており、もし支持率が下がれば党内基盤がぐらつき、官邸の主は「家なき子」一直線となる危険もはらむ。

 党外から維新、国民民主が憲法改正の実現に向けて自民党にプレッシャーをかける中、首相はどのような距離をそれぞれと保っていくのか。来夏の参院選も見据えながら、その苦悩は続きそうだ。

小倉健一(おぐら・けんいち)
イトモス研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒。国会議員秘書からプレジデント社入社。プレジデント編集長を経て2021年7月に独立。

デイリー新潮取材班編集

2021年11月12日掲載

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