「日本人は先進国の中で最も他人を信頼していない」という調査を深刻に考えるべき理由

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それとも「改革」か

 衆議院選挙で自由民主党が勝利した。岸田文雄総理が経済政策に「新しい資本主義」を唱えていることから、「成長」と「分配」のどちらを優先させるべきかが議論となっている。衆議院選で日本維新の会が議席を大幅に伸ばしたことから、「国民は改革を求めている」との指摘もある。

「成長」か「分配」か、それとも「改革」か。望ましい資本主義のあり方を巡っての論争は大いに結構だが、筆者は「3つのキーワードを有効に機能させる第4のキーワードがあるのではないか」と考えている。そのキーワードとは「信頼」だ。

 まず第一に、「成長」と「信頼」の関係を見てみたい。

 そもそも資本主義社会は信頼を基本として成り立つ社会だ。他人への信頼が高い社会であれば、経済取引が円滑に進みやすい。経済学では近年、「人々の互恵的な考え方や他人への信頼の程度が経済成長に影響を与える」という研究結果が報告されている。その研究によれば、「他人は信頼できる」と考えている人の割合が高い国は、そうでない国と比較して経済成長率が高かったという。興味深いのは「もともと他人への信頼が高い国が、大きな経済成長を実現していた」という関係は確認されたものの、「経済成長したから他人への信頼が高くなった」という関係は認められなかったことだ。

「信頼」が最も重要な要素

 次に「分配」と「信頼」だ。他人への信頼が低い(互恵的な考え方が浸透していない)国では、自らが稼いだ金銭を他人のために利用されることへの抵抗感は強いだろう。

「改革」と「信頼」の関係についても、相互の信頼感が醸成されていない国では、「身を切る」改革を断行するための国民的なコンセンサスを形成することは難しい。

 資本主義が有効に機能するためには、「信頼」が最も重要な要素なのだ。

 資本は通常、(1)金融資本(現金や株式など)、(2)物的資本(建物や設備など)、(3)人的資本(労働者の能力など)に分けられる。だが「信頼」の重要性が認識されたことで、「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」という概念が生まれている。社会関係資本とは、他人への信頼や「持ちつ持たれつ」などで表現される互酬性の規範、人々の間の絆である「ネットワーク」を指す言葉だ。

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