定番「デヴィ夫人」が広告塔の「BGS」 「半沢が1000倍返し」の仮想通貨トラブル

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 往々にして、胡散臭いものほど、その箔付けに有名人を利用しがちである。

「BGS」なる投資プロジェクトのオープンセレモニーが東京・元赤坂の明治記念館で催されたのは、昨年8月のこと。会場には、デヴィ夫人や島田陽子、千葉真一ら芸能人のほか、政界からも鳩山由紀夫元首相やアントニオ猪木元参院議員、海江田万里元民主党代表といった面々からのスタンドフラワーが飾り立てられた。

 そもそも、BGSはソーシャルゲームのプラットホーム開発を名目に「BGC」という仮想通貨を発行し、今年末までに100億円の調達を目標に発足。しかも、いわゆるマルチ商法のシステムを資金集めに取り入れ、すでに5000人余りから80億円超を掻き集めたと見られている。

仮想通貨プロデューサーとの接点

 そのBGSを運営するのは、「クリックHD(ホールディングス)」の半沢龍之介という社長である。

 業界関係者によると、

「現在43歳の半沢さんは中国武漢市の出身で、21歳のときに足利工業大学大学院への留学のために来日したとの触れ込みです。それから、16年にインターネット広告やゲーム運営を手掛けるクリックHDの前身、“クリックテック”を創業しています」

 つまり、当初は仮想通貨の世界とは無縁だった。しかし、BGSを発足させたのは、いくつもの仮想通貨詐欺への関与が疑われる自称「仮想通貨プロデューサー」のG氏と接点を持ったからだ。

「例えば、Gは巨額詐欺事件へと発展した“テキシアジャパンHD”のKINGこと銅子(どうこ)正人元会長から警察の目を欺くための防衛策を相談されたと吹聴していました。Gの発案で、仮想通貨“WFCコイン”を被害弁済に充てる計画が立てられた。しかし、結局、KINGらは逮捕から逃れられませんでしたが……」

 また、5年前にはパラオのリゾート開発地を担保にした仮想通貨「オーシャンコイン」も手掛けていた。

「当時、タッグを組んでいたのは“OZプロジェクト”と称する仮想通貨詐欺で愛知県警に今夏逮捕された5人のうちの一人、石田祥司被告です。オーシャンコインもマルチ商法で会員を勧誘していたのですが、その担当がGでした。二人は会員から騙し取った資金で、霞が関にあるビルのワンフロアを月1000万円の家賃で借り上げていた。ところが、そのうち仲間割れを起こし、そこからGが追い出されたのです」

 仮想通貨の世界を渡り歩いたGと、半沢社長が初顔合わせをしたのは19年3月だったという。

「Gは以前から、ゲームを題材にした仮想通貨に関心を持っていました。面会後、トントン拍子で話は進み、BGSの仕組みづくりをGが担い、半沢社長は宣伝活動を受け持つことになった。また、半沢社長はデヴィ夫人をギャラ1500万円で広告塔に据え、中国製電動アシスト自転車の販売にも乗り出しました」

 今年2月開催のファッションイベント「東京ガールズコレクション」では、奇抜な格好をしたデヴィ夫人によって、その自転車が披露された。

「と同時に、半沢社長自ら自転車宣伝のためのメディア露出を増やしました。知名度アップを図ると、BGSの会員集めの催しにスペシャルゲストとして登場し、ステージ上で自慢の美声を披露。続けて、ドラマ“半沢直樹“の決め台詞を捩(もじ)り、“直樹は倍返しですが、龍之介は1000倍にできます!”と豪語した。要は、テキシアでのKINGの役割を担おうとしているわけです」

 一方で、BGSにおける会員獲得の主な舞台装置は、全国各地で連日のように執り行われるセミナーである。

「レストランや商工会議所の会議室などを借り切り、10人前後の参加者が集められます。講師役を務めるのはBGS内で“アドバイザー”と呼ばれる幹部。実は、そのうちの一人に他ならぬテキシアの安達慶三元社長が加わっていたのです」

 19年11月、出資法違反に問われた安達元社長は、名古屋地裁で懲役2年執行猶予4年の有罪判決を言い渡されている。

「その判決後、安達元社長がGに支援を求め、アドバイザーに抜擢されました。“執行猶予中ですけど、大丈夫ですか?”と安達元社長が不安を漏らしても、Gは意に介さなかった。逆に、“ほかのヤツと比べて、やはり才能がある。出資者を誘い込むのが巧い”とべた褒めだとか」

 結局、BGSにかかわっているのは、脛に傷持つ連中ばかりなのだ。

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