違法残業の「小山ロール」 著書で検証、パティシエ「小山進氏」も“やりがい搾取”された修行時代

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小山氏も“やりがい搾取”の被害者!?

 小山氏は『丁寧を武器にする』、『「心配性」だから世界一になれた』、『あなたの「楽しい」はきっと誰かの役に立つ』(以上、祥伝社)などの著作を上梓している。

 3冊の著作に目を通すと、小山氏自身が「やりがい搾取」の横行する環境で修行を積み、パティシエとしての才能を開花させたことが分かる。

「小山さんのお父さんもケーキ職人だったそうですが、忙しくて家にはほとんどいなかったそうです。著書には、母親の『ケーキ屋は夜は遅いし、休みも少ないし、給料も安い。クリスマスとか、お正月とか、みんなが楽しいときに楽しまれへんで』との言葉が紹介されています」(同・記者)

 母親の言葉に従い、小学校や中学校では勉学に力を入れ、成績はトップクラスだったという。だが高校生になって父親の元でアルバイトをすると、菓子作りの魅力の虜になってしまった。調理の専門学校に進学し、将来はケーキ職人になりたいと打ち明けると、母親は泣き崩れたという。

「中堅の洋菓子メーカーに就職したそうですが、そこは直営店も展開していました。小山さんは最初、喫茶部門を担当させられます。ケーキと紅茶を出す仕事ですが、メニューにトーストもあったそうです。小山さんは自分のアイディアで、バターをバラの花の形にしました。これがたまたま社長の目に留まって絶賛され、パティシエに大抜擢されたそうです。著書の中で『自分は心配性だから充分に用意をしておかないと不安で仕方がない。人と同じことをしていたら気が済まない。どんなことでも、他の人が1なら、僕はその倍をやろうと思った』と述懐しています」(同・記者)

出世しても苦しい生活

 みるみるうちに頭角を現し、21歳で小山氏は店長を任された。会社側としては筋金入りの菓子職人ではなく、経営全般を見ることのできるオールラウンダーとして育成しようとしたようだ。

「28歳の時、小山さんは営業を担当するように言われたそうです。デパートを回ったり、イベントを企画する傍ら、パティシエのコンクールには出ていいと会社から許可をもらったそうです。営業マンとしてフル稼働していますから、休日を潰すことも少なくなかったはずです。その結果、いくつもの賞に輝き、テレビ東京から『TVチャンピオン』の出演依頼が持ち込まれたわけです」(同・記者)

 これだけ会社から評価されていた小山氏が独立することになったのは、やはり給料が安かったからだという。

「特に子供さんが難病で、治療費の捻出が大変だったそうです。いわば生活費を稼ぐために辞めたようなものです。ご本人が著作やインタビューで恨み節を口にしたことはありませんが、客観的に見ればやはり、“低賃金でこき使われていた”と言われても仕方ないのではないでしょうか」(同・記者)

残業代未払い

 独立してからの快進撃は前に見た通りだ。こういう経歴の持ち主であることと、今回の残業問題は、やはりリンクしている可能性があると言わざるを得ない。

「時間をかければかけるほど、商品の質が上がるというのは事実かもしれません。ただ、1回目の是正勧告に従っていない点は、やはり消費者からの批判が強いようです。更に、残業代の未払いは大きな問題ではないでしょうか。20年8月期の売上高は約18億6000万円です。飲食業界で残業を減らすのは大変なのかもしれませんが、ならば少なくとも給与で報いるべきでしょう。低賃金でこき使っているのであれば、やはりブラック企業と批判されても仕方ないはずです」(同・記者)

デイリー新潮取材班

2021年10日10日掲載

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