なぜ妻は突然、その日暮らしの「バツ3男」と逃げたのか……エリート商社マンが今だから語れる“反省と感謝”
家の中がゴミ屋敷に
読書などにはあまり興味を示さなかった妻が、自己啓発本を読み漁るようになった。怪しげなセミナーなどにも通い始めた。
「私はそういうのは、胡散臭いと感じるタイプです。あるとき見るに見かねて、『お金もかかるしやめてほしい』とハッキリ言いました。すると妻は『あなたは何にもわかってくれない』と、すごく不機嫌になってしまい‥‥」
そんな衝突もあって、妻がネットを見る時間が急激に増えていったという。やがて大作さんを邪険に扱うようになり、家の中がみるみる荒れていった。
「次第に家の中がゴミ屋敷のようになってしまったんです。掃除好きで、お菓子づくりが趣味だったはずの妻が、ごはんも惣菜が買ってあればましなくらいに。まったく家事をしなくなってしまったのです」
それでも大作さんは、見て見ぬふりをしていた。海外駐在を経験し、ステップアップできたと感じていた時期だったので、余計なことを考えたくなかったのだ。
「サラリーマン社会にどっぷり浸かっていたんです。出世のためなら、すべての時間を捧げることも厭わないみたいな世界に生きていました。仕事ができることはもちろん、付き合いがよくて、立ち回りが器用で、女性にモテることがステイタス。いかに男社会で上に立つかで頭がいっぱいで、家庭のことは二の次だった。私としては、きちんと稼いで、妻や子どもにいい暮らしをさせて、それで義務を果たしているつもりだったんです」
「DVが自覚できないような男のところには戻らない」
妻が家を出たのは、子どもが春休みに入ってすぐのある日。駐在から帰国して、ちょうど1年が過ぎていた。
「その日も同僚と飲んで、深夜に帰宅したら、家の中が真っ暗。妻と子どものものがなくなっていました。どこに行ったのか見当もつかない。愕然としていたら、2日目に妻から電話がかかってきました」
「DVを自覚できていない人のところには戻らない。そういうことだから、よろしく」。人が変わったような妻の声に、大作さんはぎょっとした。その後、手がかりを求めて家中を探し回っていると、タバコを吸わないはずの妻のバッグからライターが見つかった。
「妻に男がいたことに、このとき初めて気づきました」
おそらくはインターネット上で知り合ったのだろう。探偵を使って探ったところ、郊外のアパートで妻と子どもが男性と同居している証拠が集まった。妻の通話履歴からは、数ヶ月前から同じ番号の相手と毎日のように長電話をしていることも判明。深夜に長電話していたこともわかった。そんなに広い家ではないから、妻は大作さんが寝てから玄関の外に出て、電話をしていたのだと思われる。
怒りが込み上げる一方で、大作さんは虚脱感に見舞われた。
「ひとつ屋根の下で暮らしている妻が、夜中に男と電話をしていることにも気づかないほど、私は妻に無関心だったということです……」
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