お前はもう死んでいるとばかりに…岸田首相が安倍元首相に“嫌がらせ”で関係悪化を 心配する声

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 権力の欲望が渦巻く永田町に秋風ならぬ、すきま風が吹いている。舞台の主役は政権与党の頂点に立った岸田文雄首相と、自民党最大派閥の影響力を背景に「令和のキングメーカー」となった安倍晋三元首相だ。主要メディアの予想を覆す勝利を総選挙で手にした岸田自民党だが、2人の最高権力者の間に生じた微妙な距離感に不安を抱く声は少なくない。

「3A」──。9月末の自民党総裁選で岸田氏の勝利に貢献したといわれる安倍氏、麻生太郎元首相、甘利明元経済再生相の3人の「A」は、歴代最長の5年以上も幹事長職に君臨した二階俊博氏にかわる「キングメーカー」として、岸田政権で圧倒的な存在感を放つ。

 実際、岸田氏は自民党第2派閥の麻生派(49人)から麻生氏を党副総裁に、甘利氏は党ナンバー2の幹事長に任命。安倍氏が絶大な影響力を持つ最大派閥・細田派(87人)からは松野博一官房長官、福田達夫党総務会長、高木毅国会対策委員長を起用し、首相自ら率いる岸田派(41人)を含めた主要派閥で政権基盤を安定させる道を選択した。

 だが、政権発足から1カ月も経たず、強固に見えた首相と「3A」との関係に亀裂が生じたという。決定打となったのは、総選挙で敗北(比例復活)した責任をとって幹事長職を辞任した甘利氏の後任人事である。

 自民党担当のテレビ記者が解説する。

「安倍氏ら細田派には党役員・閣僚人事や衆院選の公認調整などで『岸田―甘利体制』に不満がありました。その甘利氏が事実上失脚したので、同派の萩生田光一経済産業相の幹事長起用か、安倍氏に近い高市早苗政調会長の横滑り人事を期待していたわけですが、それも岸田氏に無視されてしまい……。お前はもう死んでいる、とばかりに2度までもコケにされて安倍氏の面子は丸つぶれですよ」

「福田総務会長」をめぐり…

 元々、安倍氏は最側近の萩生田氏を官房長官に、幹事長には高市氏の起用を期待していた。しかし、実際に官房長官に就いた松野氏は細田派であるものの、甘利氏が結成した派閥横断グループ「さいこう日本」のメンバーという「甘利印」でもある。選挙公約などを取り仕切る政調会長に高市氏が就任したが、党内屈指の政策通といわれる甘利氏が幹事長の立場から自民党や政府の施策に口をはさむことが予想された。

 さらに安倍氏の機嫌を損ねたのは、当選3回の福田氏が党3役の総務会長に任命されたことだ。小泉純一郎首相時代の2003年、官房副長官から当選3回で幹事長に抜擢された安倍氏としては、若手からの大胆な抜擢は驚くことではない。福田氏が細田派に所属していることも歓迎すべきことである。だが、福田氏の父は安倍氏と犬猿の仲である福田康夫元首相。小泉政権で上司だった康夫氏とは北朝鮮による日本人拉致問題への対応などをめぐり確執が生まれ、陰に陽に批判をし合ってきた関係にある。

 両者の関係を知る閣僚経験者が語る。

「岸田氏から『福田総務会長』プランを聞かされた安倍氏はおもむろに不機嫌になり、再考するよう求めたそうです。岸田氏とのパイプ役は萩生田氏に任せ、首相経験者としての矜持から露骨にアレコレ言うことは控えていた安倍氏ですが、さすがに『嫌がらせをされているようだ』と怒るのも無理はありませんよ」

 党総裁選の決選投票で、先頭に立って支援した高市氏陣営の勢力を岸田氏に加勢させ、岸田政権誕生の立役者である安倍氏の苛立ちは隠せそうにはない。

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