市販薬と病院の薬、効果の違いは? 薬剤師が教えるドラッグストアの賢い使い方
穏健派と「内弁慶」
このうちアセトアミノフェンは、「穏健派」の薬です。代表的な市販薬は「タイレノールA」。処方薬では「カロナール」ですね。胃への負担がなく、安全性が高く、子供さんや妊婦さんにも安心して使えるのが特長です。ただ、欠点は炎症を抑える作用が弱いこと。関節痛や歯痛などの炎症を伴う痛みには、別の薬を選ぶ方が好ましいといわれています。
また、アスピリンは、100年以上前に開発された痛み止めの代名詞的存在で、代表的な市販薬は「バファリンA」。解熱鎮痛だけでなく、病院では血栓防止効果を期待して使われる一方で、インフルエンザ患者(特に小児)にはまれに脳症などの重い副作用を引き起こす可能性が指摘されているため、他の鎮痛薬とは使用条件が大きく異なります。
注意が必要な点として、ブランド名が同じでも中身が違うことがあります。バファリンの場合、スタンダードな「バファリンA」はアスピリンが主な成分ですが、「バファリンEX」はロキソプロフェン、「バファリンプレミアム」はイブプロフェンとアセトアミノフェンを合わせたもの、「小児用バファリン」はアセトアミノフェンが主成分と、非常にややこしい。このあたりは、店の薬剤師さんに聞いていただくのが無難でしょう。
イブプロフェンとロキソプロフェンは、アスピリンに比べ「新興勢力」で、比較的効用が似ています。市販薬では、前者が「イブ」、後者は「ロキソニンS」が代表例です。
前者が世界中で使われるのに対し、後者はほぼ日本国内で使われて、海外ではほとんど知られていない「内弁慶」の薬。もし、ロキソプロフェンを使い慣れている方が海外に行く際には、日本で多めに手に入れていくとよいでしょう。
はじめの質問に戻りますと、以上の4種の解熱鎮痛剤は、ワクチンの副反応にいずれも有効です。ワクチン接種が日本で始まった直後は、アセトアミノフェンが効果的との情報が断片的に広がったため、一般消費者に「アセトアミノフェン以外の解熱剤は使えない」と誤解された時期もあったと思います。しかし、どれがよいか聞かれたとしたら、「普段から飲み慣れたもの」という答えになると思います。初めて服用する薬が、体に合わなかったというケースもなくはありません。ただでさえつらい副反応が出ている時、薬の副作用まで重なると大変ですので、何度も服用して自分に合っているものを選ぶのが一番でしょう。
また、副反応対策で初めてロキソプロフェンを飲む際に、「ロキソニンSプレミアム」という、一見グレードの高そうなものを選ぶ方が多くおられます。もちろんこれが悪いわけではないのですが、鎮静催眠成分が入っているため眠くなったり、他の副作用が出るケースもあります。ワクチンの副反応に対しては、通常グレードの「ロキソニンS」が適していると思います。
[3/8ページ]