藤井聡太が4冠へ王手 竜王奪取なら“あらゆる意味”で棋士のトップになる理由

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 優勝賞金4320万円。将棋の竜王戦七番勝負の第3局が10月30、31日の両日、カラスなぜ鳴くの…の「七つの子」や、赤い靴履いてた女の子…の「赤い靴」などで知られる詩人、野口雨情ゆかりの老舗旅館、福島県いわき市の「雨情の宿 新つた」で行われた。(粟野仁雄/ジャーナリスト)

 破竹の勢いの挑戦者、藤井聡太三冠(19=王位・叡王・棋聖)が93手で豊島竜王(31)に快勝して3連勝とした。早くも、11月12、13両日に山口県宇部市で行われる第4局に勝って竜王を奪取し、史上最年少の19歳3カ月で4冠になる可能性が出てきてしまった(最年少四冠記録は羽生善治九段(51)の持つ「22歳9カ月」)。

 なにしろ藤井は昨年夏、王位戦に初挑戦しながら木村一基王位(48)を4タテにして二冠目を奪っているのだ。

 藤井は昨年まで6連敗と「天敵」と見られていた豊島に対し、今年に入って11勝3敗と圧勝し、これで通算11勝9敗となった。

 双方、序盤ですぐに角を交換して二人が持ち駒にし、じっくりした戦いになった。豊島は一日目の終わる46手目の「封じ手」に1時間14分も使った。その封じ手「三四金」が開封された二日目。しかし、午後3時ごろになってもAI(人工知能)の評価値はほとんど五分だった。だが、勝負の決め手となったのが61手目の藤井の「2二角」である。銀と角が連携して守っていた豊島陣の狭っ苦しい場所に、割り込むように藤井が持ち駒の角を打ち込んだ。素人目には「もっと後で王手とかができそうな有効なところに打てばいいのに」などと思ってしまった。ところがこの手から、豊島の評価値が少しずつ下がってゆく。さらに豊島が1時間27分も長考した「2四桂馬」から急に評価値が下がり出し、最後まで藤井の優勢は動かなかった。

 最後は藤井の3四香車の王手で豊島竜王が投了したが、少し前から、豊島は盤から目を離して上方を見やったり、マスクを外してペットボトルの飲料を飲んだり、諦めたような様子だった。

 対局後、豊島は「あまり自信がなかった。どこでまずくしたのかははっきりはわからない。2二角と打たれて厳しかった」と振り返った。

 勝った藤井は「(豊島に)積極的に動いてこられて、どう対応すればいいか分からなかったです」。次への抱負を問われても「本局はわからないところが多くて…第4局までに少しでも修正していい状態で臨めればと思います」など、相変わらず謙虚な発言だった。

 感想戦は1時間も行っていた。普通は30分ほどで切り上げるが、二人は様々な可能性を盤上に現して研究し合っていた。AbemaTV解説の女流棋士が「ものすごく多くのいろんな変化をやってましたね」と話していた通り、二人は「勝負師」から「研究者」に変わっていた。

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