「新庄」「立浪」より圧倒的に地味だが…ソフトバンク「藤本博史監督」に名将の予感

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繋ぎとして見られながらも

 また、冒頭で藤本監督は小久保裕紀への“繋ぎ”ではないかということにも触れたが、そんな期待の大きくなかった監督でも好成績を残した例がある。1人目が2002年に西武をリーグ優勝に導いた伊原春樹だ。

 伊原も上田、仰木と同じく長くコーチを務め、1980年代から90年代にかけての西武黄金時代を支えた。2001年オフに西武はまだ現役でプレーしていた伊東勤に監督を要請したが、現役続行を望んだため、その代役として伊原が監督に就任すると、2位に16.5ゲームもの大差をつけての圧倒的な優勝を飾っている。

 近年では、ヤクルトの小川淳司、西武の辻発彦も繋ぎとして見られながら成績を残した監督と言える。小川は10年シーズン途中に高田繁監督が辞任したことで監督代行に就任。翌年からはコーチを務めていた荒木大輔が監督に昇格すると見られていたが、監督代行として小川が6割以上の勝率を残したため、そのまま続投が決定。2011年は2位、2012年は3位と下位に沈んでいたチームを2年連続でAクラス入りに導いている。

 辻は2017年に3年連続でBクラスに沈んでいた西武の監督に就任すると、2018年からはリーグ連覇を達成。当初は松井稼頭央といった若手指導者に繋ぐための短期政権と見られていたが、6年目となる来季も指揮を執ることが決まっている。

 話を藤本監督に戻すと、コーチとしての実績は、ここで挙げた監督と比べても遜色なく、“名将”として名を残すことが大いに期待される。チームは投手、野手ともに世代交代が必要な時期となっているが、二軍と三軍で多くの若手を直接指導してきた経験が生きる可能性が高いだろう。「常勝軍団」復活へ向けて、どのようなチーム作りをしていくのかに注目したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年11月5日掲載

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