ヨーロッパの王室離脱劇に見る「王族の条件」 平民と結婚した事例の顛末、求められる覚悟とは?

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厳格なスウェーデン王室

 スウェーデンでは1932年から46年の間だけで実に4人もの王子たちが、「平民」の女性たちとの結婚を理由に王位継承権を剥奪され、王室から追い出された。現在の国王カール16世グスタフ(在位1973年~)のふたりの叔父たちもしかりである。

 そればかりではない。国王の3人の姉たちも同じ運命をたどっていったのだ。国王には4人の姉がいる。長女のマルガレータはイギリス人の実業家と結婚し、そのままイギリスへと移り住んでしまった。三女のデジレも同じく王室から離脱したが、彼女の結婚相手は「男爵」だった。それでもスウェーデン王室の慣例からすれば「貴賤婚」なのである。四女のクリスティーナもやはりスウェーデンの実業家と結婚した。

 姉妹のなかでは唯一、次女のビルギッタだけがホーエンツォレルン=ジグマリンゲン家の御曹司と結婚し、いまでも「王族」として遇される資格を有している。彼女の嫁ぎ先は、ルーマニア王家も輩出し、もとはプロイセン王家(ドイツ帝室)の分家にもあたる由緒正しき一族となる。

 ビルギッタ以外の姉妹たちは、本人だけは「王女(プリンセス)」の称号を名乗ることはできるが、「殿下(ハイネス)」の尊称で呼びかけられることはなく、また夫も子どもも王族扱いは受けず、王位継承権もないのである。

 こうした慣習に終止符が打たれるようになったのは、現在の国王の御代(みよ)になってからのことである。国王自身、いまだ皇太孫(国王の父は彼が1歳になる前に飛行機事故でこの世を去っていた)だった時代の1972年、自国選手団を応援しに向かったドイツのミュンヘンでオリンピックのコンパニオン役を務めていたドイツ人のシルヴィア(現王妃)と出会い、翌年に祖父が亡くなって王位を継ぎ、1976年にようやく彼女と結婚できた。

 シルヴィアはドイツ人の父とブラジル人の母のもとに生まれた「平民」である。その後、国王との間に生まれた王女ふたりと王子ひとりはいずれも「平民」と結婚している。

 こうして「貴賤婚」という言葉はスウェーデンにおいてももはや死語となりつつある。

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