「おかえりモネ」は代表作になったのでは?の問いに清原果耶から返ってきた意外な答え
現場では何も考えない
全く新しいタイプの朝ドラだった。まず説明調のセリフ、ナレーションがほとんどなかった。より見応えある作品にするためだ。事実、映像への評価は極めて高い。
説明調のセリフなどがないから、清原は目での演技、表情での感情伝達が求められた。難しい演技だ。もっとも、もともと演技力には定評のある清原だから、難なくこなした。それどころか「名優たちと一緒に仕事をしたこの1年でさらにうまくなった」と評判だ。
東日本大震災から10年という長いスパンを切り取り、さまざまな人々の思いをそれぞれ丁寧に描いたところも新しかった。描かれた1人は津波の際に祖母・雅代(竹下景子)を置いて逃げてしまい、ずっと思い悩み、姉のモネに救いを求めていた未知。モネはそれをしっかりと受け止め、慰めた。姉としても社会人としても努力して成長したのである。またヒロイン像としても新しかった。誰とでも穏やかに接し、一度も怒ったことがないところなどだ。一方で天気予報士試験の勉強など努力は惜しまなかった。
1980年代に故・松田優作さんらの映画をつくった後、北海道大文学部教授をしながら映画評論を行っている阿部嘉昭氏(63)は早くから清原を高く評価していた。約1年前、筆者の取材に対し、「清原さんは自分が置かれた場面で何をすれば良いのかが本能的に分かる人」「場面ごとに表情が微妙に違うのも魅力」などと評していた。
この言葉を清原に伝えると、「ありがたいです」と言い、少し照れた。
阿部氏の指摘どおり、たしかに現場では何も考えないという。もっとも、本能的に自分のすべきことが分かっているわけではなかった。演技に入る前に脚本を繰り返し読み、監督との打ち合わせも重ね、現場では何も考えなくても動けるようにしているのだ。それが清原のルーティン。努力を惜しまない。
「現場の雰囲気を第一に優先していたいものですから」
実年齢を超越する演技
幅広い年齢を演じられてしまうのも清原の特徴の1つ。2019年度前期の朝ドラ「なつぞら」では、実際には17歳だったのに、離婚間近の30代の母親に扮した。無理をしている感じがなく、リアルだった。ご覧になった人ならご記憶だろう。
「おかえりモネ」では18歳から24歳までを演じた。やはり違和感を抱かせなかった。見た目は18歳と24歳ではかなり違っていた。どうして実年齢を超越できてしまうのか?
「私は30代を生きた経験がありませんし、母親になったこともありません。でも、分からないなりに想像したり、監督と話し合ったりして、『その年代に見えたらいいな』って思い、演じています。だから『違和感がない』と言ってもらえると、すごくうれしいです」
やはり背景にあるのは努力だった。
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