英国はコロナ感染再拡大でも規制強化せず…日本人には理解できない「死生観」の違い

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日本では「死は敗北」

 死生観(死に関する意味づけ)が希薄になった日本では「死は敗北」以外の何ものでもないだろう。日本人は先進国の中で最も「死」を恐れる国民になってしまったのかもしれない。そうだとすれば、パンデミックによる「突然の死」への耐性が低いのは当たり前だ。

 日本ではあまり知られていないが、英国を始め欧州では「QOD(死の質)が重要である」との考え方が広がっている。その背景には「死を受け入れると残りの日々を幸せに暮らすことができ、人生のクオリテイーが向上する」という社会的コンセンサスがある。

 英国では「人生の最終段階を支えるケアシステム」が、21世紀初めからすべての総合医療機関や介護施設でスタートした。現場のスタッフが死をタブー視することなく、月に一度「終末期をどうしたいか」を確かめるための面談を行っているという。

 パンデミック当初、日本の弔いの現場は大きな打撃を受けた。だがコロナが契機となって「看取り」の重要性が再認識され、葬儀のあり方を見直そう動きも始まりつつある。日本で新たな死生観が醸成されることを願うばかりだ。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮取材班編集

2021年11月2日掲載

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