コロナ禍でバイク人気再燃 しかし新車は入手困難で中古市場活況のウラ事情
知人が転居するにあたりバイクを売却せざるを得なくなった。当人にとっては愛着のあるカワサキ250TRではあったが、他人から見たら走行距離は1万キロ超、サビサビのおんぼろ改造バイクである。バイクで走行距離1万キロ超となれば、買い叩かれるのが相場だ。かつては、高価買い取りがウリの中古バイク業者を呼んだら、引き取り代1万円を払わされた者だっていたほどだ。ところが、かなりの高値がついたという。
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250TRは、12万円もの値段がついたという。
「なんでもバイクが売れすぎて、売る玉がないそうなんですよ。おかげで家具も新調できるし、助かりました」
オートバイ市場が活況らしいのだ。80年代のバイクブームをピークに、長らくブームは終わったと言われ続けていたのに、どうしたのか。
一般社団法人全国軽自動車協会連合会が発表している「軽二輪車・小型二輪車の新車販売台数」を見ると、軽二輪(126~250cc)は昨年6月から今年6月まで、前年比で増加を続けていた。小型二輪車(251cc以上)は今年1月こそ前年比でマイナスとなったものの、2月以降は増加の一方だ。4月には軽二輪が1万台超え、小型二輪は9929台が販売された。軽二輪の1万台超えは06年4月以来、小型二輪の9000台超えは14年3月以来となる。上半期の出荷台数としては13年ぶりに10万台を超えたという。
どうやら本当にバイクが売れているらしい。「ヤングマシン」(内外出版社)編集部に聞いてみた。(https://young-machine.com/)
コロナのせいで
「実はここ10年ほど、オートバイ人口はジワジワと増えていました。ざっくり言うと、リーマンショックでドーンと落ち、東日本大震災の11年まで下がり続けましたが、12年以降は上昇傾向に転じています。おそらく80年代のバイクブーム世代が子育てを離れてリターンしたことや、子どものときにバイクが身近にあったジュニア世代が免許を取り始めたことも、理由の一つに挙げられると思います。さらに、昨年来のコロナ禍で、3密を避けて電車を使わず通勤するためにバイクに乗る方、趣味として1人ツーリングなら密にならずに済むとバイクに乗る方も増えたのが大きい」(ヤングマシン編集部)
コロナのおかげでバイクが売れる、まるで風が吹けば桶屋が儲かるのよう。需要があるなら、さっさと増産すればいいはずだが、コロナのせいでそれもできないという。
「コロナ禍で工場の操業が停止されたところもあり、その上、自動車同様、半導体やコンテナが足らないのです」(同)
かつてのバイクは、ガソリンと空気の混合気を燃焼室に送るために機械式の気化器(キャブレター)が使われてきた。ところが今やスーパーカブですら、電子制御の燃料噴射装置(インジェクション)が採用されている。点火なども司るエンジンコントロールユニット(ECU)に半導体は不可欠だ。
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