ヤクルト“下克上V”の裏に…「野村監督」を彷彿とさせる伝統の再生工場あり

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来日3年目でキャリアハイ

 そして、高津ヤクルトが再生させたのは、他球団から移籍してきた選手だけではない。2019年に来日したマクガフは、昨年成績を落としていたものの、投球内容が評価されて2年契約で残留。今季は不調の石山泰稚に代わってクローザーを任され、来日3年目でキャリアハイとなる成績をマークしている。

 また、野手では腰の故障で過去2年間は戦力となっていなかった川端慎吾が代打の切り札として定着。ヤクルトの先輩である真中満の持つシーズン記録にあと1本と迫る30本もの代打安打をマークするなど、チームの勝利にたびたび貢献した。

 昨年オフにFA権を取得した山田哲人、小川泰弘が残留し、新外国人のサイスニード、サンタナ、オスナが機能したことももちろん大きかったが、ここで挙げた選手たちの再生がなければ、阪神に競り負けていた可能性は高かっただろう。

 ヤクルトは、伝統的にファミリー体質の強い球団と言われるが、今季は、その良い部分が発揮されて移籍組も力を発揮できたといえる。また、高津監督自身も高校、大学時代は2番手投手であり、選手としての晩年は、台湾や独立リーグの新潟アルビレックスBCでもプレーするなど、様々な経験をしてきたことが、選手の再生にも好影響を与えていたと考えられるのではないだろうか。

 ただ、戦力的には、優勝を争った阪神、3位に沈んだ巨人と比べて、決して突出しているわけではなく、ここからの上積みはやはり必要となってくる。来年以降も継続して優勝を争うために、高津監督とヤクルトのフロント陣がどのようにチームを強化していくかに注目だ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年11月1日掲載

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