ヤクルト“下克上V”の裏に…「野村監督」を彷彿とさせる伝統の再生工場あり

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被本塁打わずか1本

 シーズン前の予想を大きく覆し、6年ぶり8回目となるリーグ優勝を果たしたヤクルト。就任2年目で結果を残した高津臣吾監督の手腕には称賛の声が相次いでいるが、中でも大きかったのが野村克也元監督を彷彿とさせる“再生工場”を機能させたことではないだろうか。

 その代表的な選手が、ともに楽天を戦力外となってヤクルトに移籍してきた今野龍太と近藤弘樹だ。今野は2013年のドラフト9位で楽天に入団。1年目からいきなり一軍登板を果たすなど期待されたものの、6年間でわずか15試合の登板にとどまり、2019年オフに戦力外通告を受けてヤクルトに入団することとなった。移籍1年目の昨季は勝利、セーブ、ホールドこそなかったもののキャリアハイとなる20試合に登板して防御率2.84をマーク。今季はシーズン中盤から勝ちパターンの一角に定着すると、いずれもチーム2位となる63試合登板、28ホールドという見事な成績を残して、ブルペンには欠かせない存在へと成長を遂げたのだ。

 ストレートは140キロ台中盤と驚くような速さはないが、手元でホップするような勢いがあり、空振りを奪えるのが特長。フォークボールの精度も上がり、優勝を決めた10月26日終了時点で、被本塁打がわずかに1本というのも見事である。

ストレートの完全復活を期待

 一方の近藤は、2017年にドラフト1位で楽天に入団したものの、わずか3年で戦力外となり、昨年オフに育成選手としてヤクルトに移籍。キャンプやオープン戦で結果を残して、3月15日に支配下登録されると、中継ぎとして開幕から16試合連続無失点という見事な成績を残した。5月26日の日本ハム戦で右肩に異常を訴えて緊急降板となり、その後は二軍でリハビリの日々が続いているが、シーズン前半の近藤の好投にチームが救われた場面は非常に多かった。本格的な復帰は来年となりそうだが、恵まれた体格から投げ込む150キロを超えるストレートが完全復活することを期待したい。

 投手でもう1人大きい存在となったのが、開幕直前のトレードで巨人から移籍してきた田口麗斗だ。シーズン前半は先発ローテーションの一角として4勝をマーク。夏場に調子を落として二軍で調整となった時期もあったものの、9月以降はリリーフで9試合連続無失点を記録するなど、貴重な左の中継ぎとしての役割を果たした。5勝9敗4ホールドという数字だけを見ると大活躍とまでは言えないかもしれないが、チームで3位となるイニング数を投げたことを考えると、今季に関してはトレード成功と言えそうだ。

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