映画館やデパ地下では片頭痛が悪化…予防策は? 症状を緩和する注射薬とは
“週末片頭痛”
そこで清水氏は、誘発因子の多い場所には長居しないことを心がけ、映画館ではコーラや砂糖入りのコーヒーを飲むことを勧める。どちらも血管の拡張を防ぐ糖分やカフェインが含まれているからだ。他にも、
「片頭痛に特有なのは、週末に痛みを訴えるケースです。この“週末片頭痛”は仕事のある平日は平気なのに、休日に入ると急に頭が痛むというもの。誰しも週末はリラックスした状態になるため、副交感神経の働きで血管が拡張されてしまうのです。いつもより遅い時間に起きると血糖値が低下してさらに血管が拡張する。頭痛対策のためには、休日であっても起床や食事の時間を普段と一緒にすべきだと思います」(同)
加えて、気圧や天候の変化、季節の変わり目に頭痛に見舞われるケースは少なくない。
清水氏によれば、
「梅雨時や台風シーズンに天候が悪化して気圧が下がると、人間の身体はむくみを帯び、そのむくみが血管に及んで血管が拡張してしまう。加えて、春や秋は昼夜の気温差が大きいことから、身体がストレスを感じてセロトニンのバランスが崩れる。その結果、片頭痛がもたらされるのです。加えて、セロトニンは小腸で合成されるので、腸の働きも左右します。片頭痛と腹痛・下痢といった症状を併発するのは決して珍しいことではありません」
そんな厄介な片頭痛の治療において代表的な薬として、坂井氏が挙げるのは、群発頭痛の治療にも用いられるトリプタン製剤である。
「 そのほかに、今年に入って承認され始めたのが、エムガルティやアジョビといった抗CGRP抗体や、アイモビーグといった抗CGRP受容体抗体と呼ばれる片頭痛抑制の注射薬です。これらは血管拡張物質・CGRPの働きやその受容体をブロックすることで発作を防ぎます。その効果はかなり高く、発作の頻度や症状が半減した患者が5割、症状がなくなったという患者も2割にのぼるほど。問題は価格が高額な点で、月1本使用が原則ながら、保険を適用しても1本1万4千円程度かかる。加えて、片頭痛以外のタイプには効かないため、診断や説明は慎重に行う必要があります」
悩ましい苦痛から解放されるのであれば、専門医のアドバイスを検討したいと考える向きも多いのでは。文字通り“頭の痛い”話ではあるが、まずは自分の痛みと向き合うことが肝要だ。