「中国は確実に台湾に侵攻する」前統合幕僚長が警鐘 沖縄の海が戦場と化す?
果たすべき責任
では、日本はいかにして中国に台湾侵攻のリスクを認識させ、同時に抑止力を向上させるべきか。ここでは主に、抑止力の中心的役割を担う中距離ミサイルに焦点を絞って考えてみたい。
まずは先島諸島に中距離ミサイルを配備することが重要だ。米軍が準備を進めるトマホークの改良型は、沖縄の米軍や自衛隊の基地や駐屯地から中国本土の主要都市を射程に収めるが、中国のミサイルはアメリカ本土は射程外で、その優位性は決定的だ。それだけに、米国は今後、日本に独自の中距離ミサイルの配備を求めてくるだろう。バイデン大統領が就任早々に打ち出した同盟国重視の方針は「アメリカが同盟国を庇護する」のではなく、「アメリカと一緒にやろう」であることを忘れてはならない。
さらにバイデン大統領は、アフガニスタンからの撤退に際して「アフガン国軍自身が戦おうともしない戦争で、アメリカ兵士が死んだり戦ったりすることはできないし、するべきでもない」と発言した。いくら同盟国だからといって、当たり前過ぎるこの言葉が日本に突きつけられない保証はどこにもない。日本は「同盟国も相応の責任を果たせ」というアメリカの要求をリアルに自覚する必要がある。
私はいま、日米同盟の「盾」と「矛」という関係を見直すべき時期に来ていると考えている。日本は基本的に自国の防御だけを担い、攻撃は同盟国のアメリカに依存している。もちろん、日本は今後も戦略的な専守防衛を旨とする国家であるべきだ。しかし、他国の攻撃で日本国民の安全が脅かされる場合に限っては、戦術的な敵地への先制攻撃を認める必要がある。日本人の命が他国の攻撃で危機に瀕しているにもかかわらず、その封じ込めまでアメリカに依存するのは、あまりに国家の品格に欠ける。
[8/9ページ]