「中国は確実に台湾に侵攻する」前統合幕僚長が警鐘 沖縄の海が戦場と化す?
脅威は6年以内
さりとて、いかに最高権力者の地位にあろうとも、党の慣例を反故にして自らの3期目の続投を実現させるには、それを正当化する理屈が必要だ。そこで浮かんで来るのが「台湾」である。中台統一を果たせば、名実ともに国共内戦を終結させたことになる。習氏が繰り返し口にしてきた「中国の夢」の実現であり、国家指導部の建国当時からの宿願を成就すれば、習氏は中国人民が「建国の父」と敬愛する毛沢東をも超える存在になる。つまり、習氏の野望を実現させるその理屈こそが台湾問題の解決、中台の統一なのだ。
それが実現すれば「終身総書記」への就任、つまり“皇帝”としての君臨も夢ではなくなる。習氏の共産党総書記の3期目の任期が終了するのは、ちょうど6年後。だからこそ、デビッドソン司令官は「6年以内」と指摘したのだと思う。
〈昨年公表された米国防総省の年次報告書によれば、米海軍が保有する艦艇の数は約290隻。それに対して中国海軍の艦艇保有数はおよそ350隻に達しており、報告書は中国を「世界最大の海軍」と指摘している。〉
さらにデビッドソン司令官が危惧しているのは、台湾海峡を巡る米中の軍事バランスだ。数的に見れば、海軍力は完全に中国がアメリカを凌駕している。もちろん、作戦を実施する際に中心となる空母の数は米軍の11隻に対して中国は2隻と圧倒的に少ないから質的には米軍が上だ。が、ここで注意すべきは、この30年間で中国の軍事費が42倍と驚異的な伸びを示している点である。
2021年度は1兆3553億元(約20兆3301億円)に達しており、5兆3422億円の日本の防衛費の約4倍に相当する。右肩上がりに軍事費を増大させている中国を放置すれば、いずれはアメリカの質的優位が覆されかねない。
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